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	<title>NOVEL - after dream</title>
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		<title>甘くて、ずるい</title>

		<description>泣いたり笑ったり、教室には様々な表情に…</description>
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			<![CDATA[ 泣いたり笑ったり、教室には様々な表情にあふれていた。それぞれの胸には花が飾られ、この3年間の集大成を表す紙が入った筒を手に、お互い写真を撮ったり手紙を交換したりしていた。
２年と少ししかここにいなかったなりにもそれなりの感情がこみ上げるが、どうしても素直に顔に表すことはできなくて、この雰囲気になじめなくて、結局いつも通りの無愛想な顔で自分の席に座っている。
「ごっ、獄寺ぐん、高校もよろしぐねぇ…」
目から涙をぼろぼろこぼしながら10代目が俺に話しかける。
「い、いえ！こちらこそ…10代目と同じ高校に進学できるなんて、最高の幸せです」
ポケットからハンカチを出して彼に渡す。ありがとう、とたどたどしく言いながら、10代目が涙をぬぐう。
「ほんと、ツナが合格するなんてな」
10代目の隣で、山本が口をはさむ。
「お前が言うんじゃねえよ」
高校がバラバラになって10代目に何かが起こるとすぐに助けられないので、俺はもともと進学先は10代目に合わせようと思っていた。そして、10代目と学力の変わらない山本に聞いても同じ返事が返ってきた。しかし当の10代目に進学先を尋ねてみると、「頑張って獄寺くんに合わせたい」と言われてしまったのだった。
結局俺は10代目たちのことを考えて進学校を避け、地元の平均的なレベルの高校を選んだ。10代目と山本は俺とリボーンさんに教わりながらも必死に勉強をし、めでたく3人とも合格したのである。
「ま、俺のこともよろしくな、獄寺」
「しょうがねーな」
「おい、山本」
突然、クラスメイトの1人が山本に駆け寄り、廊下のほうを指差した。
示されたほうに立っている顔を真っ赤にした女子が、こっちを見るなり会釈をした。
「あの子から呼び出し」
ほんっとお前はモテるな、と彼はニヤニヤとはやし立てるように山本の肩をたたき、そのまま去って行った。
「んー、じゃ俺、ちょっと行ってくる。この後来てくれるんだろ？」
この後は山本の家でいつものメンバーで卒業祝いをすることになっている。
「うん、お邪魔します」
「親父が朝からごちそう作ってくれてるから、楽しみにしててくれよな。それじゃ、またあとで」
山本が教室から出ていくのを見てから、10代目が口を開いた。
「獄寺くんは、女の子に呼び出されたりしないの？」
「あー、」
別にマズイことでもないのに、なんとなく頭を掻いてしまう。
「ここ一週間で何回か呼び出されましたけど、全部断ってます。」
「断ってるんだぁ。山本もそう言ってたなぁ…俺からしたらもったいなさすぎるけど」
「あいつはともかく俺はこんな性格ですし、ただ単にハーフだから目立つだけッスよ」
そう答えながら、俺は鞄を持って立ち上がる。
「俺はそろそろ帰ります。10代目はどうしますか？」
「あ、俺ちょっと用事があるから、先に帰ってて」
「わかりました。では、また後で」
「うん、ばいばい」



日本に来てから何人もの女に思いを寄せられ、そのすべてを拒否してきた。
最初は単純に女というものに興味がなかったから断っていたのに、いつのまにか理由が変わってしまっていた。どれだけの人数にどれだけのことを言われても、1人の女のことが頭から離れなくなっていたからだった。
卒業を目前にして呼び出される頻度は増えた。そのたびに、俺も同じことをしてみようかと考えてしまう。同じように、俺の気持ちをあいつに全部吐き出そうかと思ってしまう。
今日もまた、そんなことを考えながら、また何人かの気持ちを拒んでしまった。
（たとえあいつを選んでも、あいつは俺を選ばないのに）
あいつは10代目のことしか見ていなくて。俺とは口げんかばかりで、いい雰囲気になんて一度もなったことがない。
こうして毎回、空しい結論にたどり着いてしまうのである。
そんなことをまた頭の中で繰り返しながら、山本の家にたどり着くために公園を横切る。まだ小学校の下校時間ではないらしく、公園に子供はひとりもいなかった。
そのかわり、咲き掛けの桜の木の下にあるベンチに、ぼうっと座る見慣れた顔を見つけた。
一番見たくて、一番見たくない顔だった。ほっといて通り過ぎればいいのに、体が勝手に彼女に近寄り、声をかけてしまう。
「ハル」
「あ…獄寺さん」
ハルがはっとした顔で俺を見る。彼女の手にはケータイが握られていた。
「なにやってんだ、こんなとこで」
「いえ、あの」
彼女はなぜかうろたえた顔をする。
「山本んちに行くんだろ？もうすぐそこなのに迷ったのか？アホだから」
俺が山本の家のほうを指差すと、ハルは首を振った。
「違いますよ！ハルは…迷ってるんです」
「だから、迷ったんだろ？」
「そうじゃなくて、山本さんの家に行くか行かないかで迷ってるんです」
「は？」
今更何を言っているんだろうと思った。確かにハルは1人だけ学校も違うし、卒業式も1週間前だった。でも、そんなことをこの期に及んで気にするような間柄でもない。
「ったく、変なことで悩んでんじゃねえよ。行くぞ」
一歩踏み出すと、ハルが俺の服の裾をつかんだ。
「まってください」
そういう動作に、いちいちどきっとしてしまう自分がもどかしい。
「なんだよ」
「座ってください」
ハルは思いつめた顔で裾を引っ張り、自分の隣に座らせようとする。よくわからずに立ちすくしていると、「話を、聞いてほしいんです」と彼女は俺にすがった。
山本には何時に来いとは言われてないから遅刻も何もない。少し話すくらいなら文句は言われないだろうと、俺は言われるがままに彼女の隣に座った。
これはチャンスかもしれない、なんて場違いなことを考えだした。今ならいつものように口喧嘩することもなく、素直になれて、卒業の雰囲気に任せてハルに…いえるかもしれない。
「で？何だよ」
ハルは手の中にあるケータイを見て答える。
「さっき、京子ちゃんから電話があったんです」
「それで？」
「ツナさんに告白されて、付き合うことになったって」
「それで…え？」
ぎょっとしてハルの顔を見る。彼女は思った以上に思いつめた表情をしていて、目は潤んでいる。
10代目が告白。だからあの時、俺の帰らなかったのだろう。あの人も教室の雰囲気に影響されたのかもしれない。俺でさえ少しでもその気になってしまったのだから。
「それは、その」
何を言ったらいいのかわからなかった。10代目と笹川が結ばれて、目の前の女は10代目がずっと好きで、俺はその女が好きで。
「ちゃんと告白してないのに、ふられちゃったんですね」
ハルが力なく笑う。見ていられなかった。
「そう、なるな」
もっといい言葉が言えないのかと自嘲する。山本だったら、きっと気の利いた一言が言えただろう。
「ハルはせめてちゃんと告白してふられてから、ツナさんのこと諦めたかったです」
ハルが唇をかみしめる。涙はぎりぎりのところでとどまっていた。
「ああ」
「京子ちゃんのことが憎いとかでは決してありません。でも、やっぱりどうしても複雑で…」
いろんな感情が交差して、なかなか言葉がでない。ハルを励まそうという「ヤサシイ」気持ちってものもあった。
でも、それよりも大きいのは、黒くて、あまりに自分勝手な感情だった。
それがどうしても頭から消えなくて、俺はぶっきらぼうな返事しかできないのである。
「だから、どんな顔でツナさんたちに会っていいのかわからなくて、ここでずっと…」
「じゃあいいだろ、ずっと俺の隣にいれば」
言ってしまった、と思った。
膝の上で固い拳になっていた彼女の右手に、俺の左手を重ねる。
え、とハルがこっちを見たのはなんとなくわかったけれど、俺は彼女の顔なんて見られなかった。自分が今していることがどれほど最低なのかは分かっているから、面と向かってなんて言えなかった。
こいつは自分が想うことに一生懸命で、自分が想われていることにはとことん鈍感だったらしい。
こっち向け、と、今まで何度念じただろう。
今なら、思いっきり念じていいんじゃないだろうか。やっていることは最低でも、俺がいままで貯めていた努力には、十分見合った最低さなんじゃないだろうか。
「なんで、」
ハルがついに嗚咽を漏らし始めた。罪悪感がドロッと俺の心に流れる。それでもこの手を離したくなかったから、俺はさらに強くハルの手を握ってしまうのである。
「なんで…そんなこと、今、言うんですかぁ…」
「…なんでだろうな」
「やめてください」
「なんでだよ」
「やめて、ください…」
ハルは俺から手を振りほどこうとするけれど、俺は離さなかった。これで離してしまえば、今度こそ全部終わってしまう。
「だから、なんで」
「獄寺さんのこと…好きになっちゃうからです」
ずっと望んでいたはずの一言だったのに、俺は素直に喜ぶことができなかった。
本当にこれでいいのだろうかと思いながら、俺はどんどん、こいつの中へとおちていく。
「いいだろそれでも」
「そんなんじゃ、ハルはとんだ尻軽女です」
「俺には関係ない」
う、と彼女は息を漏らし、肩を震わせる。諦めがついたのか、俺から離れようとする力は弱まった。
「ずるいですよ」
「なにが」
「こんな時に、こんなことをするなんて」
ずるいです、と彼女は連呼するけれど、しだいに声が涙に取られてしまう。
ずるいなんて矛盾してる。俺はずっと、ハルが10代目しか見ていなかったから何もせずに気持ちを抑えていただけだ。ハルが10代目から目をそらしたすきに俺が現われて、それがずるいなんて。
ついに耐え切れなくなったのか、ハルは人目もはばからず上を向いてわんわんと泣き出した。
「俺のこと見ろ」
なにをやってるんだとも思っているけれど、この手はどうしてもハルから離れたくないらしい。
だって、こいつが俺を見てくれるチャンスは今しかないんだろ？
「俺のことを、好きになれ」
すごく残酷なことを言っているのは自分でもわかっていた。
ハルは嗚咽をもらすだけで、それ以上何も言わなかった。




甘くて、ずるい




今から俺が、お前の全部をさらっていく。 ]]>
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		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-10-03T02:16:09+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>明るい闇にとける誓い</title>

		<description>「お、来た来た。」
山本が苦笑しながら…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「お、来た来た。」
山本が苦笑しながら俺を自分の家に招き入れた。彼は笹川了平ととランボとで、独身同士この家をシェアしている。
名高いボンゴレファミリーボスの守護者にはもともと１人ずつに一軒家が用意されていたが、「だだっ広いところに１人で住むのは落ち着かない」という話になって、結局同居することになった。
「さっきまでは笹川とビアンキもいたんだけど、もう遅いから帰っちまったんだ。」
「笹川はもう沢田だ。１０代目に失礼だろうが」
「あ、ワリ。そうだった」
そう話をしながら廊下を通り抜け、３人共用のリビングにたどりつく。
自宅以上に堂々と床に寝ころび熟睡する俺の妻、ハルがいた。山本がやってくれたのか、毛布がかけられている。
「泣き疲れちゃったみたいで全然起きないのな」
「あーあ…これを持ってくのか」
「入口まで部下の何人かと来てたんだろ？手伝ってもらえばいいじゃんか」
「やだよ」
強めに彼女をゆすってみるものの、少し顔をしかめるだけで目覚める気配がない。
「ハルさんを他の男性に触れられたくないのですね。獄寺氏の愛を感じますよ」
山本の隣でキザったらしくいうランボに蹴りを入れると、「痛い！」と悲鳴をあげながら奴は自分の部屋へと退散していった。
「ったく、ここに来てたんなら早くいえっつーの。10代目にまで連絡しちまっただろうが」
なんとかハルを背負うことに成功し、立ち上がりながら山本に言う。
「ハルがお前に迎えに来てもらうのがいやだって聞かなかったし、みんなで愚痴を聞いてたからな。ま、結局それで盛り上がったのは女子だけど」
沢田はともかく、姉貴がいたのなら話はヒートアップしそうだ。
いらだつ俺の表情を見て、山本が「でもさ」となだめるように言った。
「今回はお前が悪いと思うぜ。ゆっくり話、聞いてやれな。」
「話？あいつに誘われたディナーをドタキャンしたっていう話だけだろ？」
「それがそうじゃないんだなぁ。ヒントはハルが今日お酒を飲まなかったってことかな。んじゃ、また明日本部でな！」
無理やり俺の背中にいるハルを押し、家から追い出そうとする。
「お、おい！」
続きを聞き出そうしたものの、半ば山本に締め出される形で彼らの家を後にした。


「…ん、」
「やっと起きたか」
風呂から出てリビングに入ると、ちょうどハルがソファで目を覚ましてむくりと起き上っていた。
「はい…」
と、返事をしてから、俺と喧嘩中だということを思い出したのか急に冷たい態度になって、そっぽを向いてもう一度布団をかぶってしまった。
「おい」
「ハルはベリーアングリーです」
「いい加減機嫌直せ」
「やです。獄寺さんの極悪非道！」
いつもならここで俺が逆ギレして二次災害に発展するところだが、珍しく山本が「ハルの話を聞け」と釘を刺してきたので、「はいはいそうですよ！」と無理やりにハルを抱き起こす。
「何するんですか！」
「今日は特別にお前の言い分を聞いてやる。言え。」
「なにをですか。」
「今日のディナーで、お前なんかするつもりだったんだろ？なんだったんだよ」
ハルがおいしいレストランを見つけたから行こうと言い出すのも、強制的に俺を連れ出すのもいつものことだ。10代目たちが結婚してからは、俺が誘われる頻度は増した。
しかし、行くはずだったディナーは俺の仕事が急に入ったせいで無しになってしまった。それもよくあることだから、ハルはいつものように「仕事ならしょうがないですね」と納得するはずだった。けれども、今日はハルが怒り出したのだ。仕事に遅刻できないので、仕方なく後で埋め合わせするからと言い残しハルを家に置いて出て行った。しかしハルの怒りは収まらかったようで、仕事をハイスピードで終えて家に帰るとハルは姿を消していたのだった。
「なんでもないです」
「なんでもないディナーをキャンセルしてお前がキレるわけねえだろ」
反論すると、ハルはうつむいてしまったが、しばらく待っているとハルがぽつりと話し始めた。
「…大事な話があって」
「うん」
「最初は隼人さんが日本に出張してるときだったので、まずビアンキさんに相談したんです」
「うん」
確かに三日前まで日本にいた。俺に最初に話さなかったところが気に食わないが、話を進める。
「そしたら、慎重に話したほうがいいって言われて」
「なんでだよ？」
「この話になると、離婚するひとも、いるって、言われて」
彼女の目がじょじょに潤んで、言葉もとぎれとぎれになる。
突然現れた「離婚」の言葉に、思わず顔をしかめる。
「はぁ？リコン？」
「でも、たしかにそういう話も聞いたことあるなって」
なにいってんだこいつ、とため息をついてから、ハルの頭をぐしゃぐしゃになでた。
「いいから言えよ。離婚なんかしねーよ」
「ほんとですか？」
「ほんとだから言え」
「ほんとのほんとに？」
「お前が浮気したとかそういう話じゃないならな。いいから言え」
「赤ちゃんができたんです」
「わかったから言え…え？」
彼女をなでる手が止まる。あまりに予想外な話だった。ハルの様子からして、絶対にマイナスな話だと思っていた。
「おなかに、赤ちゃんがいるんです」
ハルの瞳の力が強くなる。
だから山本はこいつが酒を飲まなかったことを強調したんだ。そういえば俺が日本から帰ってきてから、ハルが酒を口にしているところを見ていない。
「こども？」
「はい」
「俺とのだよな？」
「当たり前です獄寺さんのハレンチ！」
ハルが真っ赤な頬を膨らませる。
「悪い悪い」
それが離婚につながるとビアンキが脅したのも理解できた。子供が他のマフィアの人間に目をつけられないように離婚して家族を遠くに置くのは珍しい話でもない。
「でもやっぱ、離婚はしねえよ。」
「ほんとですか？」
ハルはまだ不安そうな表情を浮かべている。
「姉貴が言ったようなことをする奴は家族を守りきれない下っ端のすることなんだよ。ボンゴレ嵐の守護者にどんだけの部下がついてると思ってんだ」
「そうですけど」
「ボンゴレなめんな。あの10代目がトップなんだぞ」
「そうですね！」
ハルが急に明るい顔をして目を輝かせる。
結婚しても、俺とハルの10代目愛は変わっていない。
「安心しろ」
そっとハルを抱き寄せると、ハルも同じ力で俺に応える。
「はい」
時計を見るともう2時を回っていた。安心したら急に眠くなってきて、わざわざ寝室に移動するのも面倒くさい。
「もう寝るか、このまま」
「お腹冷えちゃいますよ」
「こうやってお前を抱きしめてたら冷えねえよ」
こんなかっこつけたセリフはプロポーズの時以来だし、明日からはまた、10代目にも呆れられるような痴話げんかをして、ハルは沢田家に転がり込んで、俺が迎えに来るのを待つんだろう。
あれこれ考えると目がうるんできてしまった。
（電気消しといてよかった）
ハルにバレたら絶対にこれからずっとネタにされる。
でも、それだけ家族ができたことが幸せだった。血のつながった両親とこども。ありきたりだけど、一番ほしかったのにつかめなかった俺にとっては、最大級の幸せだった。
（絶対、バラバラになんてさせねえよ）
ハルの腹をそっと撫でる。ん、とハルが少し唸ったので焦ったけれど、目は覚ましていないようだ。




<span style="color:#FF6600;">明るい闇にとける誓い</span>





（全部まとめて守るから）
心の中でつぶやく。
これが、俺の一生をかけた決意だ。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-09-09T12:39:21+09:00</dc:date>
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		<title>昼下がりのランデブー</title>

		<description>「ジャンケンポン！」
ボンゴレファミリ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「ジャンケンポン！」
ボンゴレファミリー本部の守護者会議室に、全く似合わない掛け声が響く。
「よっしゃ！悪ぃな獄寺。」
「極限に頼んだ。うまいやつを選べよ！」
「ちっ、くっそ…」
山本と了平に見送られ、負けた獄寺が部屋から出る。誰が今晩の酒を買ってくるのかを、真っ昼間から大人気なくジャンケンで争って決めていたのだった。
広大な本部施設と庭園を抜け、門を出てしばらく歩いていると、後ろから半泣きの声が近づいてくることに気がついた。
「うわぁん、絶対遅刻ですぅぅぅぅぅ…」
聞きなれた声に振りかえると、やはり声の主はハルだった。べそをかきながら全速力で走っている。
「こんなとこで情けない声だしてんじゃねぇよ、ファミリーの格が下がるだろうが」
「あぁ、獄寺さん…ごめんなさい、ハルは止まってしゃべってる場合じゃないんです！」
少しスピードをゆるめ、ハルは小走りで獄寺の隣につく。獄寺も様子がなんとなく気になったので、ハルのスピードにあわせた。
「どこいくんだよ」
「大学ですよ！今日は午後からなのでのんびり準備してたら、意外と時間なくて…今日は大事な講義だから、遅刻したら、単位がピンチなんですう…」
ツナと守護者はれっきとしたボンゴレファミリーのメンバーとして働いているが、京子はツナたちと同じようにボンゴレ敷地内に住んでいるものの、正式なファミリーの一員にはならずにイタリアの大学に通っている。
「あそこなら車で余裕だろ」
「今日は、車が足りてないから、電車で、行くことになってて」
電車なら遠回りだから車の２倍近くかかるだろう。それに、駅まではまだ距離があるのに、体力のないハルはもう息切れし出している。
そう考えてから、獄寺はハルの腕を掴み突然足をとめた。
「獄寺さん疲れたんですか？ハル、急いでるんで先に行きますよ！」
フラフラになりながらも腕をふりほどいて先に行こうとするハルを、行かせまいと引っ張る。
「お前のが疲れてるだろうが。本部に戻るぞ」
ハルは不審そうに獄寺を見て、首をかしげた。
「なんでですか？」



<span style="color:#FF9900;">昼下がりのランデブー</span>




「乗れ」
獄寺に放り投げられたヘルメットを、ハルは呆然としながら見つめる。
「乗るって、これにですか」
獄寺がまたがっているのはバイク。しかも、改造済みのかなり豪華な黒塗りで、盛大なエンジン音を立てて揺れている。
「後ろが空いてるだろ。バイクなら車より小回りが利くから早く着く」
ほら、と獄寺が自分の後ろを叩くが、ハルはためらっているようで、のろのろとバイクに近づく。
ハルの頬が少し赤らんでいるのに気がついて、改めて自分も恥ずかしくなったので獄寺は目をそらした。
「早くしろ。どっちが急いでるんだ」
バイクなら余裕で間に合うはずなのに、照れ隠しのつもりでついせかしてしまう。
「はひ…」
後ろに重みがかかる。ようやくハルが座ったようだった。
「メットかぶったか？」
「はい」
いくぞ、と声をかけたが、ハルはぼうっと座ったまま、腕もだらんと下げてしまっていた。
「おい」
「は、はい」
「俺のこと掴んでないと落ちるぞ」
そう言っても、ハルは獄寺のスーツの端しか掴まない。
無理やりゆるいスピードで少しだけ発進させると、「はひ！」とハルがぐらついた。
「だから落ちるっつーの、そんなんじゃ」
頼むから早くしてくれ、と獄寺は頭の中で懇願した。改めて恥ずかしがられるっとこっちもますます恥ずかしくなる。最初からしっかり自分の腰を掴んでくれればこんなに恥ずかしい思いをしない。ヘルメットの中の温度がどんどん高くなっている気がするのだった。
そろそろとハルの腕が前のほうに回ってくる。彼女のやわらかい感触が背中に伝わって、さらに顔は熱くなる。この際降りて逃げだしたいほどに自分の気持ちが落ち着かなかった。考えれば獄寺が同じような歳の女をバイクの後ろに乗せたことがなかった。乗せることがあるのは、山本や了平、ランボばかりで、女は獄寺にとってはまだまだ子供のイーピンくらいだった。ましてや、最初に乗せるのが、よりにもよってハルだなんて。
そもそもハルとこんなに密着するのも初めてで、考えるのはやめようと頭の中で唱えても、どうしても神経は背中に集中してしまうのだった。
「桜、いっぱい咲きましたね。きれいです」
本部の外壁沿いを走っていると、中で敷地を囲うように咲いている桜の花びらがこぼれおち、２人の乗るバイクやヘルメットをなでて流れていく。
ツナがボンゴレを継承すると決めた時に、少しでも日本の要素を取り入れて新ボスと守護者を迎えやすくしようとした９代目が植えさせた桜たちである。
「ああ」
何とか短い返事をする。
「日本が懐かしいですね。京子ちゃん元気でしょうか」
京子はイタリアには移らずに日本の大学に進学している。
「連絡取ってるんだろ？」
「そうですけど、やっぱり直に合って顔が見たいですよぉ」
小道を抜け、大通りにでる。平日の真昼間とあってか、道はかなり空いていて急ぐ必要は全くなさそうだった。
「京子ちゃん、ツナさんとラブラブなんですよ。遠距離恋愛なのにとてもロマンチックです。」
ツナと京子がいかに仲がいいかをノンストップで語るハルの呑気な声に、獄寺は疑問を口にした。
「お前はいいのかよ」
「何がですか」
ハルはまだ呑気な声を出している。
「あんなに10代目にべったりだったのに、10代目が笹川と付き合い始めてからはそんな調子で」
ああ、とハルが頷いたのを背中に感じる。
「それが、全然なんです。たぶん他の女の子と付き合っちゃったらショッキングで三日三晩泣きどおしだったと思うんですけどねぇ」
後ろをちらりと見ると、やっぱりハルはいつもの明るい顔をしている。から元気ではなさそうだった。
ハルが髪を切ったのも、ツナが京子と付き合い始めたころだった。ハルがツナを好いていたことを知っている山本や了平はあれこれと気を遣ったけれど、ハルは何も変わらない様子で、「ボブって、なんだか首が寒くて落ち着かないですね」と笑っていた。似合う、なんて顔から火の出そうな言葉をハルに伝える勇気は獄寺にはなかったから、彼はただじっと様子を見ているだけになってしまっていた。
「ま、10代目以上に素敵なヤローなんていないし、お前に恋愛なんてもう一生無理かもな」
「えー、無理じゃないです！」
ハルが急に獄寺をゆっさゆさとゆさぶったので、バイクも大きくぐらついた。
「てめっ、なにしやがる！」
「ハルだって好きな人の1人や2人いますよ、もう３年経ったんですから！」
「あ、まあ、そうだな」
意外な答えに、獄寺は思わず口ごもりながらも、そうだよなと強引に自分を納得させた。
大学に男はごまんといるし、サークルに仲のいい奴もいっぱいいるだろう。ハルは普通の学生なんだから、普通の青春生活を送っていて当たり前だ。
「でも２人はだめだろ…」
「はひ、言葉のアヤですよぉ！」
はいはい、と獄寺の返事はどんどんぶっきらぼうになる。小さな舌打ちもしてしまった。
「どんな奴だよ」
いらいらしながらも、つい聞いてしまう。
自分は何年もハルを見てきたはずなのに、ちょっとしか付き合いのない男に簡単に追い抜かされたことにいらついてしまう。
「そうですねぇ…ツナさんよりイヤな人かもしれません」
そんな獄寺の気持ちも知らずに、ハルはあっけらかんと答える。
「まぁそうだろうな」
「言葉も乱暴だし、気も短いし、もしツナさんと戦ったらたぶん負けると思います」
「10代目より強いやつがいるわけねーだろ」
でも、とハルは一息ついて続けた。
「ツナさんと同じくらい、かっこよくて優しいんですよ。ツナさんと違ってたまにですけど」
その言葉を聞いて、いらだちが最高点に達した獄寺はバイクのスピードを急に上げた。
「はひ！？獄寺さん、安全運転でお願いします！」
「バカ、もう着いたっつーの。おら」
乱暴にバイクを止め、車体を少し傾ける。
「やった、これで間に合います！ありがとうございましたー！」
ダッシュで校門に向かうハルの背中に、獄寺が大声で叫ぶ。
「おいてめぇ、メット！」
「あっ、すみませーん！」
ぽーんと投げられたヘルメットが、獄寺の頭にクリーンヒットした。
「てんめぇ！」
獄寺のどなり声にもハルは振り向かず、ごめんなさーい！という無駄に明るい声だけが遠ざかっていく。
くっそ、と、地面に転がったメットを拾いあげる。
『ハルだって好きな人の1人や2人いますよ』
ハルの声が獄寺の頭の中でリピートして、また胸の奥に黒い靄がかかったような気分になる。
誰なんだよそいつ。顔見せろ。俺より、俺よりも。
「どこがいいんだ」
ハルにそう言ったら、あいつはなんと答えただろうか。
「どこのどいつなんだよ…」
『んー、獄寺じゃね？』
突然、バイクからのんびりした男の声がした。
「なっ、バイクがしゃべった！？」
『はは、なーに言ってんだよ、ハンドルに無線機つける場所つくったのは獄寺じゃんか。ケータイにかけても出ないしさ』
バイクが喋ったのではない。声の主は山本だ。
ハッとしてハンドルを見る。運転中に喋るために無線機をつけられるように改造したことを思い出した。
『ま、獄寺が無線つけっぱにしてるから、ハルとお前の話、全部俺と笹川先輩が聞いちゃってたけど。ワリぃな』
「なっ…」
いつもは切っているはずだったのに、よりにもよって今日は何かの拍子に無線機の電源が入ってしまっていたようだった。
『俺はハルが好きなの、獄寺だと思うな』
「何言ってんだよ。大学には男が…」
『面白いこと言うのな。ハルが通ってる大学には男いないだろ』
「はぁ？」
獄寺が、校門に彫刻された文字を見る。昔から知っている大学だったし、たしかボンゴレにもこの大学を出た奴らはいるはずだった。
『あれっ、５年前に女子大に再編されたの知らないのか？ハル言ってたと思うけどなぁ。』
もしかしたら言っていたかもしれない。呆然としている獄寺のこともつゆしらず、山本は続けた。
『で、酒買った？あと、守護者会議遅刻するぜ？』
「あ…げっ」
腕時計を見ると、普通に帰っては会議に間に合わない状態だった。獄寺は無線機の出力をイヤホンに切り替え、バイクを急発進させる。
『獄寺さぁ、告っちゃえばよくね？』
「誰に」
『ハルにだよ』
恋愛話に無縁な山本がそんなことを言いだすので、思わずむせる。
『あっはは、やっぱ獄寺もハルのこと好きなのな』
「てめー勝手に決め付けんな！」
『決め付けてなんかねーよ。お前たち、ボンゴレ公認カップルなんだぜ。みんなであたたかく見守ってるんだからさ』
『んじゃ、会議遅れないようにな～』
一方的に通信が切られる。ボンゴレ公認についてあれこれ問い詰めたかったが、切られてはしょうがない。
「くそっ」
舌打ちをして、バイクのスピードを上げる。会議にはぎりぎり間に合いそうだ。
顔はまだ熱いし、背中もあたたかさと柔らかい感触がまだ残っている。
そんなことを考えていること自体にさらに赤面しながら、獄寺はハイスピードでボンゴレ本部に戻っていくのだった。 ]]>
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		<dc:date>2013-08-18T01:57:20+09:00</dc:date>
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		<title>放課後相談室</title>

		<description>「あの、10代目。」
帰りのHRが終わった…</description>
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			<![CDATA[ 「あの、10代目。」
帰りのHRが終わった途端、獄寺はツナの肩を叩いた。
「あ、獄寺くん、よかったら俺と一緒に帰らない？今日は京子ちゃん、黒川と用があるみたいで。」
「そうっすか！いや、ちょうどよかったッス。俺も今日10代目にお話しがあって。」
「じゃあ一緒に帰ろう。よかった、最近獄寺くんと全然帰れてなかったから…ごめんね。」
山本は毎日放課後に練習があるからもともとほとんど一緒に帰っていない。けれども、獄寺は毎日のように帰っていたのに、ツナが京子と付き合うようになってからはすっかり回数が減ってしまった。
「いえ、お気になさらず。10代目はどうぞ、笹川と仲良く帰ってください。」
俺なんか暇つぶしに使ってくれればいいです、と獄寺が笑う。
「ううん、獄寺くんや山本も同じくらい大切だから、どっちが優先とかないよ。帰りたいときに帰ろう。」
「そんな、大切だなんて…もったいないお言葉です、10代目！」
大げさに喜ぶ獄寺に、ツナはいつものように苦笑いしてから、また聞いた。
「で、話ってなに？」
必要以上に大きな声で話していた彼が、突然周りのクラスメイトを気にして声をひそめる。
「ここでは少し…。今日、10代目のお屋敷にお邪魔できないでしょうか。」
（人がいるところで話せないってことは、マフィア関係かな？）
今朝、リボーンは特になにも言ってなかったのに。いつも通りツナを叩き起こし、いつも通りツナの朝食を横取りし、いつも通り奈々の肩に乗ってツナを見送っていた。
それなのに、今獄寺がそんなことを言い出すなんて、よっぽど緊急で危険な用事なのだろうか。




<span style="color:#33CC33;">放課後相談室</span>




「おかえり、ツっくん。獄寺くんも、いらっしゃい。」
奈々が、いつものように玄関でツナたちを迎える。珍しく、となりにフゥ太も、ランボやイーピンもいない。
「ただいま。母さんしかいないの？」
「ええ。ほかのみんなにはお遣いをお願いしているの。獄寺くん、いつもツナと遊んでくれてありがとうね。」
「お母様、お邪魔します！」
獄寺が深く頭を下げる。
「どうぞ。お茶とお菓子、いま用意するわね。」
「いえ、おかまいなく。」
玄関ではいつも通り元気だった獄寺も、階段を上がってツナの部屋に入った途端急に落ち着かなくなった。
お茶とお菓子が乗ったテーブルを前に、なにも言わずきょろきょろしている。
（いまさらきょろきょろするほどの部屋じゃないのになぁ。）
いつもはランボがつっかかってきたりビアンキがやってきたりして騒がしくなるのに、今日は誰もいないから余計静かになってしまう。
（こんなにためらうってことは…やっぱマフィアの重大な話？）
思わずツナは息をのむ。考えれば、マフィアの話で場所を選ぶのは自分くらいで、獄寺は人がいる前で堂々とボンゴレや匣兵器の話をしていた。もっとも、みんなにはゲームの話だと思われているけれど。
（そんな獄寺くんがなかなか口にできない話って…。）
「あ、あの、とりあえずお茶飲んだら？」
相手がいつもの感じではない分、ツナの調子も狂ってしまう。恐る恐る声をかけてみるものの、獄寺の返事はない。
顔を覗き込んでも、ボーっとしたまま、目の焦点はツナには合っていない。
「獄寺くん？」
もう一度ツナが呼びかける。獄寺ははっと飛び上がって我に返った。
「は、あっ、はいっ、お茶ですね…すみません、いただきます！」
あわてて獄寺が麦茶の入ったグラスを持ち上げようをした。しかし、そのまま取りこぼし、グラスが鈍い音を立ててフローリングに転がった。麦茶がだらだらと広がっていく。
「も、申し訳ございません10代目！」
ツナが差し出したティッシュで、獄寺があわててそれをふく。やっぱり、獄寺くんらしくないなとツナは獄寺を手伝いながら思った。一方、あまり急いでなさそうな感じもして、もしかしたら緊急事態ではないのかもしれないとも考えた。
「それで獄寺くん、どうしたの？話があるんだよね？」
「あ、あの…それは…。」
言うか言わないかでまだ迷っているようだった。エメラルドの瞳が、またあちらこちらを向く。
「そんなに言いづらいほど重大なことなの？」
「いや、その…。」
獄寺はいまだにためらい、あまり話そうとしない。瞳の動きも速くなる。そこまで追い詰めた顔をされると、ツナも心配になってきてしまった。
「相談、なんだよね？」
「は、はい、でも、たぶん10代目が思っているほど重大なモンじゃないです。」
獄寺が小さくわらう。深刻な話と言うより、単に獄寺が言うのを恥ずかしがっているだけのようだ。
「うん、どうしたの？」
「あの、10代目。」
座りなおして、彼は少し顔を赤らめながら言った。
「笹川とは、いつもどこへお出かけしてるんでしょうか。」
「へ？」
思いがけない質問に、思わずツナのすっとんきょうな声が出てしまう。
獄寺はすこし恥ずかしがっていて、うつむいたままでツナとは目をあわせようとしない。
「俺と京子ちゃんがどこに…その、デートに行ってるかってこと？」
「そうです。」
ゆっくりと獄寺が頷く。
「ご、獄寺くん、誰か誘うの？」
ぎく、と獄寺くんの体がこわばる。
「さすが、10代目の超直感…。」
「ってか、獄寺くん、つきあってる人いたんだ。」
「それは違います10代目！女ができたらすぐにご紹介いたします！」
「じゃあ好きな女の子がいるんだ？でも、獄寺くんがそんな相談するなんて…。獄寺くんは人気だから、俺よりずっと女の子の経験があるんだとばかり。」
先日のバレンタインでも、獄寺のげた箱は開いた瞬間にチョコレートの雪崩が起きていた。
「あれは女が勝手に寄ってくるだけです。イタリアの時も、全員シカトしてました。」
確かに、獄寺はチョコレートにも興味がなさそうな顔をして、結局ツナやツナの同居人に全部配って、自分は一つも貰っていないようだった。
「でも獄寺くん、俺が京子ちゃんに告白するときはものすごくアドバイスくれたじゃん。」
ヘタレなツナを毎日励ましていたのは、山本と獄寺だった。

『10代目、告白するなら、人間が情熱的になる時間帯、つまり夜が向いてるみたいです。あと、どういう言葉を使うかより、大きな声で、相手の目を見ながら簡単な言葉でっていうのも…。』
『まあまあ獄寺。そんなまどろっこしいこと考えなくてもさぁ。告白はドーンと自分の気持ちを伝えりゃいいんだよ、ツナ。そうすりゃあ、ドカーンズガーンと笹川の心に響くだろ。』
『んなテキトーなもんでうまくいくわきゃねーだろうが野球バカ！』
『あはは、俺も告白なんてしたことねーからさ、ワリ。ま、ツナなら大丈夫だろ。』
『ったく…。でも山本の言うとおり、どんな女でも10代目ならイチコロっすよ！』

「だから、獄寺くんはそういうのに慣れてるって思ってたんだけど…。」
「いや、あれは10代目のために図書館で借りた心理学の本を参考にしたもので、俺の経験じゃないんです。」
獄寺がバツが悪そうに頭をかく。
「ええっ。」
まさか、告白の仕方まで理論指導で、わざわざ調べてくれているとは思わなかった。
「10代目のためならそれくらいチョロイっす。それで、10代目はいつもどこへ行かれるんでしょうか。」
いつもは助けてもらってばかりの獄寺が、すがるようにツナを見つめる。
（俺の時はみんなに協力してもらったんだ。獄寺くんが俺のことを頼る機会なんて全然ないし、こういう時こそ役に立たないと。）
京子と付き合い始めてからのことを一生懸命考えながら、ツナはぽつりぽつりと答えた。
「えっと、動物園とか、買い物とか…あ、映画もよく行くよ。そうだよ、映画がいいんじゃない？見た後映画のことゆっくり話せるし。」
うーん、と獄寺があまり納得がいかないような顔で唸る。だめか、とツナは少し落胆した。
「映画…あいつと映画の趣味は合いそうにありません。」
「そっか、確かに見たいものの趣味が合わないと面白くないかもね。」
あいつ、ってことは、もうすでに結構仲がいい子なんだろうな、とツナは思った。誰？と聞きたくなったが、恥ずかしがる獄寺の様子では、簡単に聞き出せそうになかった。
「あとは、どっちかの家が多いかなぁ。一番お金かからないしね。」
ツナがつけたすと、獄寺は目を丸くして動揺した。
「えっ！？家ッすか？そ、それは10代目…大胆ですね。」
「え、なんで？」
「だって…その。」
獄寺が意味ありげに、ツナのベッドをちらりと見る。
「家ってことは、そういうことっすよね。」
（そういう意味かよ！）
思春期特有の返しに、思春期とは思えないほど遅れているツナは首と手を全力で横に振って否定した。
「ちち、違う！そうじゃないよ！うちに来ても、あんまり完全な2人きりにならないし…。」
京子がツナの家に来ても、ツナの同居人たちがツナの部屋に押し入るし、ツナが京子の部屋に行っても、心配性な兄が常に2人を監視している。
だから、獄寺が想像しているようなことはおろか、まともに接近することさえできない。しどろもどろになりながらも、ツナは必死に説明をした。
「た、確かにそうですね。」
獄寺はなぜかほっとしたような顔をする。
「獄寺くん、相手の子はどんな子なの？その子によって、行きたいところが違うんじゃないかな。」
相談に乗りたい気持ちが一番だったけれど、好奇心もかなり含まれていた。あざといなぁ、と、ツナ自身も思う。
（あんなにモテるのに女の子を無視してた獄寺くんが、デートに誘おうとしている女の子って誰だろう。）
学校以外に、しかも女子の友達が獄寺にいるようには見えない。それなら、きっと自分の知っている女子だろうとツナは考えた。
「どんな…そうっすね…やかましい感じの。」
「や、やかましい？」
「はい。いっつもつっかかってきます。」
（獄寺くんにつっかかる女子なんているかなぁ…。）
クラスの女子を何人も浮かべるものの、そんな女子は浮かばない。ほとんどの女子は遠くから見て歓声をあげるだけで、話しかけることはあっても、つっかかるという感じではないし、そもそも獄寺は相手にしていない。
獄寺に簡単に話しかけられて、彼がまともに返事をする女子は京子くらいだ。
「やかましいってことは、京子ちゃんみたいにおっとりしてる感じじゃないんだね。」
「そうっすね。」
「なら遊園地がいいんじゃない？獄寺くんもジェットコースター大好きだよね。」
なるほど、と獄寺が手をたたく。
「いいですね！ただ、待ち時間に喧嘩はやらかしそうですが。」
「喧嘩って…、そんなにもめるの？」
そうですよ！と、大きくうなずき、とても好きな女の子の話をしているようには思えないほど険しい顔で獄寺が答える。
「この前も、英語教えろとか言うからカフェで勉強つきあってやったのに、俺の教え方が下手だとか文句付けてきやがったんですよ。ったくあの女、人の善意をコケにしやがって。」
ただの愚痴かと思って聞いていたが、ツナに少し違和感の残るエピソードだった。
（なんだろう、どっかで聞いたことある話だ。）
「そうそう、この前の全国模試で勝負したときも、あいつが勝ったから仕方なくケーキをおごることになったんです。普通１つじゃないっすか、そういうの。でも、あの女は10個も要求してきたんです！勝手に注文して、会計を俺に任せたままちゃっかり席にすわってやがるんです。あいつのせいで財布がカラですよ。」
その話にも、ツナは違和感を感じた。やっぱりどこかできいたことがある話だ。でも、どこで誰から聞いたのかを思い出せない。
そんなツナの気持ちも露知らず、獄寺はべらべらとエピソードをいくつも語る。全てではないものの、やっぱりいくつかはツナに聞き覚えのあるものだった
「仲いいんだ、その子と。放課後も結構会ってるんだね。」
「仲がいいわけないっす！腐れ縁ですよ。あいつに付き合わされてるだけなんス。」
言いながらも、獄寺が少し楽しそうな顔をしているのがツナには分かった。冷やかされたと思っているのか、顔も少し赤い。
「へえ、でも、今度は素直に誘えるといいね。」
う、と、獄寺がたじろく。
「そうっすね…ホント、10代目にはかなわないっす。」
照れくさそうに、獄寺が銀髪をかきむしる。
その声を聞きながら、ツナははっとした。
（そうだあの話は、たしか）
「あ、もうこんな時間か…そろそろお暇させていただきます、10代目。相談に乗ってくれてありがとうございました。」
獄寺が立ちあがり、部屋から出ようとする。
「いつもみたいにうちで夕飯食べていけばいいのに。」
1人暮らしの獄寺は、ツナの家に遊びに来た日にはいつも夕飯を食べて帰るし、そのまま泊まることも多い。それなのに、今日は少し申し訳なさそうな顔をして、
「すみません、今日はその、そいつと外で飯食う約束してるんです。」
と答えた。
なんだ、とツナの顔に思わず小さな笑みがこぼれる。
（俺が京子ちゃんといる間に、2人で仲良くやってたんじゃないか。）
自分の応援なんかなくても、2人はきっとうまくいくだろう。むしろ、俺と一緒に帰る必要なんてないかもしれない。
「そっか、じゃあまた明日ね、獄寺くん。」
「はい、10代目。」
獄寺がドアノブに手をかけたところで、ツナは彼を呼びとめた。
「獄寺くん。」
「はい？」
獄寺は振り返って首をかしげる。
ツナの頭に、京子の言葉がいくつもよみがえる。
『この前のお休みに商店街へ買い物に行ったとき、―――が獄寺くんとカフェでお勉強してるとこをみたの。』
『昨日、道でたまたまケーキをいっぱい持った―――に会ったの。お友達とテストの勝負で勝ったから10個も買ってもらったんだって。』
『さっきね、昇降口でツナくんを待ってるとき、校門の近くで―――を見かけたの。待ち合わせしてた感じだったけど、私を目があった途端にどこかへ逃げちゃって…誰と待ち合わせしてたのかな？』
（ああ、なんで俺は気付かなかったんだろう。）
こういうときに超直感が働くべきだよ、と、ツナは自分の鈍感さにあきれた。
「デートの帰りにケーキ食べるってどうかな。女の子はケーキ好きだから。」
「ケーキ屋…なるほど！そうですね、俺はそんなに好きじゃないですけど、あいつはかなりのケーキ好きですからね。」
うん、とツナは頷く。ケーキ好き。やっぱりそうだ。憶測が確信に変わった。ツナは、ついにその名前を口にした。
「ハルなら、絶対喜ぶよ。」
その言葉を聞いた獄寺が、口をわなわなと震わせる。顔は今日1番赤くなっている。
「し、し、失礼します！」
バタン！と勢いよく獄寺がドアを閉め、去っていく。何度か階段を駆け降りる音がしてから、「うわっ」という声とともにドタン！という別の大きな音が家中に響き、下の方から「どうしたの獄寺くん、大丈夫？」と、奈々の声がかすかにツナにも聞こえた。どうやら彼は階段を滑り落ちたらしい。そこにちょうどリボーンたちが帰って来たらしく、「隼人にい、大丈夫？」「ギャハハ、ごくでらダセー」という声もする。そのあとに、「いえ、大丈夫ですお母様！お邪魔しました！」と獄寺のから元気と、玄関のドアをまた勢いよく閉める音が響いた。
（あんな獄寺くん、初めて見た。）
一連の壮絶な音を、ツナは穏やかな表情で聞いていた。
「ツナ、何にやけてんだ。」
部屋の扉が開き、リボーンが現れる。上着を脱ぎに来たらしい。
「ちょっとね。」
たいして面白くない話だと思ったのか、リボーンは「キモいぞ」と言って上着をツナに投げつけてから、そのまま立ち去ってまた階段を下りて行った。
（そっか、あの2人が、そっか。）
ツナは天井を仰ぐ。意外だけど結構お似合いかもしれない。気になるから、今度京子ちゃんたちと放課後も残って、窓からみんなで2人の様子を見ていようかな、なんて企んで、またにやける。
ツナの頭には、獄寺たち2人が言い合いをしながらも、仲良く帰っていく様子がはっきりと浮かんでいた。 ]]>
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		<dc:date>2013-08-04T02:23:05+09:00</dc:date>
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		<title>左手にキス</title>

		<description>アスカがリビングに入った時、シンジはい…</description>
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			<![CDATA[ アスカがリビングに入った時、シンジはいつも通り夕食の準備をしていた。
（こんな日くらいレトルトにすりゃいいのに。）
何回も彼にそう言ったことはあるが、そんなんじゃダレちゃうから、と彼は拒否したのだった。
いつもと違うのは、彼が「おかえり」を言わないところだった。



左手に<span style="color:#FF00FF;">キス
</span>


「夕飯なにー？」
カバンを放り投げながらアスカが尋ねるが、シンジの返事はない。不思議に思ったが、料理に集中しているのだろうと勝手に解釈し、彼女は部屋に入って部屋着に着替え始めた。
しかし、部屋を出て、テレビをつけてもなお、シンジは一言も発さない。そんなに今日の使徒戦はきつかっただろうか。いや、彼は今日は一つも傷ついていないし、さほど苦戦したものでもなかった。
「ねえ、夕飯何時くらいにできるの。」
その質問にも、彼は答えなかった。彼は鍋に向かい合うだけで、こっちを見ようともしない。
「ちょっと、シンジ？聞いてんの？」
シンジは少しも反応を見せない。アスカは腹が立ったのでぶん殴ってやろうかと思ったが、疲れた体はソファと完全に融合してしまっている。人を小突くためにいちいち立つなんて面倒でしょうがなかった。
彼女はそのまま、疲労に身を任せてうたた寝に入ってしまった。はっと目が覚めると、時計はもう1時間進んでいて、シンジはリビングにいなかった。シャワーの音がかすかに聞こえる。シンジは風呂に入っているのだろう。
重たい瞼をこすりながらダイニングテーブルに向かうと、1人ぶんの夕飯が置いてあった。内容はチャーハンとスープで、ラップがかかっている。
椅子に座り、アスカは黙々とそれらを食べた。シャワーの響く音が、さっきよりも大きくなった気がした。
（私、なんかしたかしら。）
出撃前はなにも異常はなかった。招集がかかってからはもちろん喧嘩をする時間なんてないし、ネルフからの帰りも別々だった。思えば、いつものように一緒に帰らなかった時点でおかしかったかもしれない。
いつもはアスカが機嫌を損ねていきなり怒るパターンなので、逆の立場となると戸惑う。それ以前に、心当たりがない。
もやもやしながら食事を終え、柄にもなくシンジの使った分も合わせて食器を全部洗った。
そうしているうちに、シンジが風呂場から戻ってきた。
「…あ。」
何か言おうと思ったが、言葉が出てこない。
「食器、ありがと。」
今までにない低い声だった。明らかに不機嫌だ。感謝されているはずなのに、体はこわばってしまう。
「シンジ、あの。」
「ごめん、今日は疲れたからもう寝るよ。おやすみ。」
足早に自分の部屋へ向かうシンジの肩を、アスカがつかんだ。
「私、なんかした？」
「べつに。」
声のトーンは低いままだ。背中もあっちをむいたままだ。
「言いなさいよ。怒るのは勝手だけど、理由言われないと腹立つわ。」
「なんだっていいだろ。アスカには関係ないよ。」
肩を振ってアスカの手を振りほどく。あわてて、アスカはシンジの腕を掴んだ。
「よくないわよ！」
「…。」
アスカと目を合わせないように、シンジはうつむく。
「関係ないわけないでしょ。言えっての。何よ。」
「…その、腕。」
「は？」
シンジが、自分を掴んでいないほうのアスカの腕を見る。
「ああ、これ？これが何よ。」
「僕のせいだろ。」
シンジの顔はまだ不機嫌そうだ。
はぁ、とアスカのシンジを掴む力が抜けた。
「そんなこと…しょうがないでしょ。私がディフェンスだったんだから。」
いつもの作戦内容だったら、零号機が援護、初号機がディフェンス、弐号機がオフェンスだった。けれども、左足を修復中の弐号機は機動力を欠くため、今日の作戦は特別にディフェンスに回されていた。
オフェンスのシンジをかばおうと、アスカはシールドを持って駆け付けたが、守りに入る直前でシールドを落としてしまった。取りに行くのは間に合わないと思ったアスカは、そのまま左腕で使徒のビームをもろに受けたのだった。
「僕がもたもたしてたからこうなったんだ。」
シンジがアスカの左腕の包帯をなでる。傷は手首から肘まで、全体的に広がってしまっていた。
「大丈夫よ。範囲はでかいけど浅いから、レーザー治療で傷跡も残らなくなるらしいし。」
手当てをするために帰りの時間がシンジと違ってしまっていたのだ。待ってくれているのだろうと思ってアスカが治療室を出ると、シンジはもう帰ったとマヤから告げられた。
「ほんとに？」
シンジの表情が明るくなる。感情を素直に出せない自分とは反対に、表情がころころと変わる彼を見ていると、なんというか、ただ愛おしいと感じてしまう。
「ほんとよ。こんなこといちいち気にすんじゃないわよ。これくらいのケガなら覚悟のうちにも入らないわ。」
世界を守る仕事が、２，３日で治るケガをするだけで成せるなら軽いものだ。
シンジがさらにほっとした顔をする。抑えられなくなったアスカは、左手で彼の頭をゆっくりとなでた。
「だから、弐号機がフル稼働になったら、あんたが私を守るのよ。」
「…うん。」
シンジが静かにアスカに口づけをする。
今日はミサトが残業でよかった、とアスカは静かに思うのだった。

そんな、甘い夜。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-07-23T01:39:20+09:00</dc:date>
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	<item rdf:about="https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry7.html">
		<link>https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry7.html</link>
		
				
		<title>ネイビーアクシデント</title>

		<description>「なんでこんなににぎやかなのよ。」
ア…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「なんでこんなににぎやかなのよ。」
アスカが不満そうにおかずを口に運ぶ。不意に風が吹き、揺れる髪の毛が彼女の食事を妨げる。
「ええやないの、１人や２人。」
トウジが呑気にコロッケパンを詰め込みながらいう。入りきらなかったコロッケのかけらをボロボロと落とし、アスカが不満そうに彼を睨む。
「ごめんねアスカ、私が屋上で食べたいなんて気まぐれ言ったから…。」
アスカの隣でヒカリがうつむく。
「いーのよ。問題は、このバカ２人が偶然屋上にやってきたってこと。」
「偶然じゃないよ。な、トウジ？」
ケンスケがにやにやしながらトウジを見る。トウジは何も言わずにそっぽをむいた。
「あー…あー、そういうことね。ならいいわ。」
アスカもケンスケと同じ表情をする。察しがついた。隣の棟にある教室から、見上げれば屋上は少し見える。トウジはそこからヒカリを見つけたのだろう。
「ところで碇くんは？」
「熱があるみたいで帰ったで。昨日から頭痛いとか言うてたし。」
確かに朝から具合が悪そうにしていた。アスカも今日は弁当を作らなくていいといったのに、彼女が起きるとシンジは少しけだるそうにしながらもキッチンに立っていた。
「シンジと言えばさぁ、例の噂きいた？」
屋上には他に誰もいないのに、ケンスケが３人に身を寄せて言う。
「噂？なんやそれ。」
トウジが興味津々と言った顔で聞きかえす。どうせくだらない話だろうと思ったアスカは、箸を持ち直して食事を再開する。
「シンジが彼女とデート説。」
３人が言葉を失う。カランカランとアスカの箸が落ちる空しい音が屋上に響く。
「あっ。」
「お箸？私、予備の割りばしあるから使って。」
ぼうっとしながらアスカは箸を受け取る。ケンスケの話の続きが気になってしょうがない。
「惣流や綾波やったとかいうオチやないやろな？」
トウジが念を押す。
「違う違う。見かけたのはこの学校の生徒だから、惣流なんて有名人はすぐ分かるよ。」
たしかに、とヒカリがつぶやく。エヴァのパイロットとしてついこの間まで戦っていたシンジたち３人を知らない生徒はこの学校にはいない。
「せやなぁ。んで、相手はどんな女やったんや？」
ケンスケが楽しそうに話す。
「腕組んで道を歩いてたらしいんだけど。そいつが見たのは後ろ姿だったらしいから顔は分かんなかったって。紺の地に、白い花柄のワンピースの人と。背はシンジよりでかかったらしいけど…そもそもシンジってちっちゃいもんな。」
「いつ見たのよそれ。」
「３日前。先週の金曜日だよ。」
先週か、とアスカは内心悔しがる。アスカはドイツ支部の報告会に参加していて、２日前に帰って来たばかりだった。どう行動していてもシンジたちを見ることはできなかった。
「はぁ、誰やろなぁ、気になるなぁ。」
「はっ、あのボーっとしたさえない男がモテるわけないじゃない。ぜったい見間違いよ。」
戸惑いながらも、精いっぱいの余裕を見せるアスカ。しかし、トウジに追い打ちをかけられてしまう。
「せやから、有名人のセンセがそう簡単に見間違われへんやろて。それに、あいつはモテモテやぞ。惣流がシンジといるようになってからはあんまないけど、惣流がここ来る前はしょっちゅう歓声あびたりして、なあ。」
トウジの言葉にヒカリとケンスケが頷く。
「たしかに、今は表に出てないだけでまだファンは多いだろ。」
「世界を守ってたんだもんね。」
「お、惣流さん？さっきの余裕は何処？」
ニシシ、とトウジがうつむくアスカの顔を覗き込む。
「っさいわね！」
アスカのどなり声と、スパーン！という気持ちのいい音とともにトウジが吹っ飛ぶ。
そのあとの午後の授業では、トウジの右頬に大きな赤い跡がついていたという。


『シンちゃんに彼女ぉ？』
電話口でミサトの呑気な声が響く。
仕事中だと聞いていたが、帰り道にだめもとで電話をかけてみると、休憩中のミサトが応答した。
『ネルフの監視にそんな情報は入ってないわよ。あなたとレイ、洞木さん以外にシンちゃんは女の子とのまともな接触なし。』
「監視って誰といるとかいちいちずっと見てるわけ？趣味わるぅ…。」
アスカは顔をしかめる。
『エヴァに乗ってないっつってもあんたたちはまだ大事な人材なんだからね。あんたとシンちゃんがイチャイチャしてんのもすぐに分かるわよ。』
「は？そんなことしてないっつーの。」
『で、なんでそんなこと聞くの？監視の目がついてないとこでシンちゃんが女の子に会ってた？』
ミサトに噂の内容を話すと、彼女の言葉の歯切れが悪くなった。
『あー、なるほど、ね。アスカがいなかったときね。』
「監視は見てなかったの？」
『えーっと…じょ、情報はないわね…。』
情報はない、とは言っているものの、ミサトの焦りは明らかにアスカに伝わっていた。絶対に何かを隠している。
怪しい。やはり本人に確認するしかないかとため息をつく。
「もういいわ。家につくし。」
『あ、ああ、じゃあ、今日はいつもの時間に帰るからね。』
電話を切り、玄関のカードキーを通す。ドアを開けたとたん、リビングから掃除機の音がした。
リビングに入ると、シンジがせき込みながらいつものように掃除機をかけていた。
「あんた…風邪で早退したんじゃなかったの？」
「掃除をね、昨日やろうと思ってたんだけど…宿題があったからできなくて。時間があるうちにやらないと…。」
掃除機の音に負けないようにシンジが大きな声を出す。その声も少しガラガラだ。どこまでくそ真面目なんだとアスカはあきれた。うっかり、彼を問い詰めることを忘れそうになってしまった。
「あんた、先週の金曜日の放課後のこと覚えてる？」
「え、先週の金曜日？どうして？」
シンジが掃除機をとめ、不思議そうに首を傾ける。
「噂回ってんのよ…あんたがその日、腕組んで女の人とデートしてたっていうやつ。紺の地に白い花柄のワンピだって。」
昼は予想外なうわさ話につい動揺したが、やっぱりこいつに彼女なんか、とアスカはたかをくくっていた。シンジのほうを見もせず、冷蔵庫から出したジュースをコップに注ぎながら、軽い口調でシンジに話した。
しかし、言ってから振りかえると、シンジはあきらかに狼狽した表情を浮かべていた。
「あ、えっと…その日は…。」
「は？」
思わず間抜けな声を出す。
「その日は…普通に、帰ったし…アスカもドイツだから、１人で。」
本人は隠しているつもりだろうが、焦りの色は全く隠し切れていない。これほどに嘘をつくのが苦手だったのかと、アスカは呆れてしまった。
「あ、そ。じゃあそいつの見間違いね。」
無理やり、彼女はそこで話を切り上げてしまった。

次の日、いつもシンジが座っているアスカのとなりは空席だった。彼は昨日むりやり家事をやりとおしたため、結局風邪をこじらせて学校に来られなくなってしまった。
大卒のアスカにとって、一般的な中学校の授業は退屈でしかなかった。それでも、板書が日本語を書く練習になるからと、いつもは話半分に聞いてノートを何となく取っているが、今日はペンを指で器用に回すだけで一文字も書くことはできなかった。
（なんであいつらはかたくなに隠すのかしら。）
２人が何かを隠しているのは明らかだった。噂の話をした時のうろたえ具合も尋常ではなかった。
（答えなんて、決まってるか。）
彼女は自分がシンジにどんな感情を抱いているかは自覚しているし、隠しているつもりでもなぜか周りにはばれてしまっている。幸い、シンジ本人は分かっていないようだが。
おそらく、シンジはガールフレンドの存在を誰にもばらさずやっていっているつもりで、ミサトはアスカの気持ちを察して、シンジと同じ態度を取っているのだろう。
頭ではそんな考えがまとまっているけれど、気持ちの整理が追いつかない。だって、もう自分の気持ちにシンジは答えてくれないのだ。
授業中じゃなかったら、きっと視界がかすんでいた。

シンジが寝ていると思ったアスカは、音をたてないように自宅に入った。
案の定リビングには誰もいなかった。
アスカは忍び足で自室に向かう。いつもわがままを言って家事をさせているのだから、たまには休ませてやろうと彼女なりに考えた結果だ。
しかし、ふすまを開けるとその気持ちは消し飛ばされてしまった。
「…あんた、なにやってんの？」
シンジがアスカの洋服が入ったタンスを開けている光景が目の前に飛び込んだ。
いつも、洗濯物をしても彼はアスカの洗濯物は彼女の部屋の前に置くだけで、わざわざ中に入って、しかもタンスを開けたりなんかしない。
シンジはと言えば、アスカが声をかけてびくついたきり、タンスのほうを向いてうつむくだけで何も動かなくなってしまった。
「ちょっとシンジ？」
その言葉に、しゃがんでいた彼は尻もちをつき、アスカのほうを向いた。
「あ、あ、違うんだよアスカ。」
ぶんぶんと両手を振り、全力で否定するシンジ。
それでも、たとえ同居人とはいえ、同い年の少女のタンスを覗いていた彼への疑いは簡単にぬぐえない。
「なにが違うのよ…。」
「そういうことで、覗いてたとか、そんなんじゃないんだよ、ほんと。ほんとだよ。」
懇願するようにシンジが言う。言ってることが要領を得ていない。
「で？」
アスカは呆れた顔でしゃがみ、シンジの頭の高さに合わせる。
「言い訳聞いてやるわよ。なにしてたの。」
「あの、それは…。」
シンジがためらう。この期に及んでまだ黙るつもりか。ガールフレンドがいるって言うのに、それではもの足りないというのか。
「黙るんなら、あんたのこと変態として一生軽蔑するけど。」
アスカが睨みつけると、シンジは観念したような顔をした。
「あの、全部言うから…怒らないでね。」
「やっと話す気になったのね。言いなさいよ早く。」

その日、シンジは1人で下校していた。ネルフからの招集もない。
上司のミサトも、大学のゼミの同窓会に昨日出かけたきり帰ってこない。
（たまにはコンビニのお弁当とか買ってこうかなぁ。今日ぐらい夕飯作らなくてもいいよね。）
帰ったらトウジから借りたゲームもやりたい。最近ゲーム本体はすっかりアスカに独占っされてしまってるけど、今日はのびのびできる。
（帰り道のコンビニに行こうか、それとも、遠出して―――）
「シーンちゃん！」
不意に、後ろから思いっきり抱きつかれた。声を聞いただけで、シンジは振り向かなくても誰かは分かっていた。
「ミサトさん！」
「ガッコ帰りぃ？いつもよりちょーっち遅いんじゃあい？」
そう言いながらミサトがシンジの腕にからみつく。シンジはたじろきながらも答えた。
「今日は学年集会があって…。」
その時にシンジは始めて振り返った。ミサトは頬を紅潮させ、目もうつろだった。完全に泥酔している。酒臭いことにも気づいた。
「ミサトさんどんだけ呑んだんですか。」
「二次会でオールしてたのよぉ、おーる。呑まなきゃやってらんあいっつうの。みーんなケッコンしちゃってさ、指輪見せつけやがって。どーせ私は一生独身…。」
ミサトの悪口が続きそうだったので、シンジはなんとか遮る。
「と、とにかく離れてくださいよ！お酒臭いです…。」
やーん、と無駄に色っぽい声を出すも、シンジには通用しない。簡単にひきはがされてしまった。
「って、ミサトさん…それ…。」
「…え？あっ…。」
離れると、ミサトのワンピースの腹の部分全体が真っ赤に染まってしまっていることに気がついた。地は紺の服だが、花柄は白いのでしみがはっきりと分かる。血ではない。ワインだ。
「もう駄目ですね。オールってことは呑んだの夜でしょ？時間がたっちゃってるから落ちませんよ。捨てましょう、自業自得です。」
シンジの言葉にミサトは反応しない。青い顔をして、できてしまった大きなしみを呆然と見つめている。
「ミサトさん？そんなに高かったんですか、それ。」
「わ、わからないのよ…。」
その声は完全に酔いがさめている。
「分からない？」
「これ、アスカのだから…。」
え、とシンジが固まる。
「アスカの？借りたんですか？」
「か、借りたっていうか…その、ほら、いまアスカいないでしょ？帰ってきたら言おうかなーみたいな…。」
つまりは、勝手に拝借したということだ。あはは、と弱い笑いを見せてから、
「助けてシンちゃぁん…。」
一気にミサトは涙をこぼした。

「…と、いうわけで…。」
シンジが、後ろに隠しておいたものをアスカに差し出す。
「ミサトさんに頼まれて、同じワンピースの新しいものを買ってきたから、アスカが確実にいないうちにこっそりここに入れようと思って、ここにいました…。」
「なるほどね。」
ワンピースを奪い取るように受け取り、眺める。噂通り、紺の地に白の花柄。まさか自分のワンピースを指しているとは思っていなかった。確かに、ドイツに発つ少し前に衝動買いしたものだ。
「一昨日、アスカが帰ってくる前に買ってきてなんとかするつもりだったんだけど、アスカ到着早まったからできなくて。」
アスカは手続きミスで急きょ１本前の便に乗らされたことを思い出した。
「じゃあ、噂はデマだったのね。ややこしいったらないわ。」
ワンピースをタンスにしまいながら言う。
「噂？あ、あの、腕組んでたって言う…。」
「ったく、あんたたちが最初から正直に言ってればこんな面倒なこと考えないですんだのよ！」
アスカがシンジにデコピンをかます。シンジは「いたっ」と小さな悲鳴を上げ、涙目になった。
（これくらいの復讐なら小さいもんよ。）
３発グーで殴ってもお釣りが帰ってくるレベルだわ。
腹が立っているはずなのに、表情は不思議と、どんどん緩んでしまうのだった。 ]]>
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		<dc:date>2013-07-21T23:53:44+09:00</dc:date>
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		<title>A&amp;R（シンジ誕生日記念。LAS？）</title>

		<description>「えーっと、どこだったかしらね。」
独…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「えーっと、どこだったかしらね。」
独り言を言いながらアスカはフロア案内を指でたどる。
日曜日、家族連れやカップルでにぎわうこのショッピングモールに１人で入るのは気が引けたが、そうも言ってられない。いつものように同居人を連れ出すことはできない。
「店の名前わすれちゃったわね…。」
頭をかくと、彼女の髪の毛がさらさらと揺れた。かつては腰まで伸ばしていたが、今では鎖骨に触れるくらいまで短く切ってしまっている。
（こりゃ、歩いて探したほうがよさそうだわ。）
ため息をひとつついてから、歩き出そうと振り返った先に、少女が間近でこっちを見ていたことに気がついた。
綾波レイだった。
「ちょっ…あんた、なにやってんのよ、こんなところで。」
「最上階の本屋に行こうとしてたら、あなたが何か迷ってる風だったから。」
すっかり忘れていた。知り合いに見られて、ましてや鈴原のようなのに遭遇して茶化されたらたまったもんじゃないと、わざわざ一番近いショッピングモールを避けたのに、レイはこの街に引っ越していたのだった。
「迷ってなんかいないわ。ここ来るの、２回目だから慣れてないのよ。」
「そう。私も、このフロアにはあまり用がないから案内はできないわ。」
彼女たちが今いるのはファッションフロア。たしかにレイにはあまり用事のなさそうなところだし、そもそも、レイの服はほとんどリツコやミサトが選んだネルフからの支給品である。
「だから、案内なんていらないのよ！ど忘れしただけだもの。あんたはさっさと本屋に行きなさいよ。」
「ええ、じゃあまた。」
はいはい、と乱暴に手を振り、アスカはその場から離れた。

「１５００円でございます。」
店員に言われたとおりのお金を払い、レイは本を受け取った。
帰ろうとエスカレーターに乗った時、ポケットから細かい振動を感じた。レイはポケットからケータイを取りだし、耳にあてた。
「もしもし。」
『あんた、まだ建物の中にいる！？』
出るなり、アスカの勢いのある声が耳に飛び込む。
「本を買ったとこ。」
『今すぐ来て！さっきの階にあるエスポワールってお店よ、いいわね？』
返事をする前に電話を切られた。ディスプレイに残された「通話終了」の文字を少し見てから、レイはアスカに会った階へと下って行った。

「この前シンジと一緒に行った時は値段を見たから足りると思ったのよ。でも、今思えばあの時はセール中だったわ。」
「それで、500円足りなかったのね。」
用事はそれだった。仕事が忙しいアスカには、その日までに出なおす余裕などなかった。
「学生のあんたから借りるなんて、情けないわね。」
レイは離れた女子高に通い、高校の近くでまた新しい1人暮らしを始めている。シンジは暮らしは今まで通りに、市内の進学校に通っている。
すでに大学を卒業しているアスカは、「もう義務教育じゃないのにわざわざ金かけて学校に行くのは面倒くさい」と言って、ネルフで研究職に就いている。
「私は気にしていないわ。」
「社会人としてのプライドってもんがあるのよ…はあ、誰にも見られたくなかったのに…。」
アスカはふてくされたように唇をとがらせて、ストローをくわえる。アスカのジュースはレイのおごりだ。
「なぜ？」
「あんたには分からないわよ。」
ため息交じりに言ってから、
「でもほんとに助かったわ。ジュース代と合わせて、今度返しに行くから。」
「それは、いいわ。」
その言葉を聞いて、アスカの表情が険しくなる。
「えっらそーなこと言ってないで、黙って受けとりゃいいのよ。」
「お金はいいから、お願いがあるの。」
予想外の返答に、アスカは首をかしげた。
「なによ、あんたがそんなこと言うなんて珍しいわね。」
レイは、何度か瞬きをし、少しためらいながら答えた。
「わたしの服を一緒に選んでほしい。」
「え？」
さらなる予想外の答えに、アスカは拍子抜けした。
「いつまでも、ネルフに頼るのは良くないと思って。」
「ふぅん、なるほどね…お安い御用よ。」
アスカは腕を組んで偉そうに答えた。
（私とはまた違うファッションのものを着せられるわね。面白そうだわ。）
レイには普段自分が着ない、白い清楚な服が似合いそうだ。いや、思い切って足を出したりしてもいいんじゃないだろうか。
「そうとなりゃ行くわよ！ほら。」
「ええ。」

「あ、お帰り、アスカ。」
アスカがリビングに入ると、ミサトがソファでぐうたらし、シンジはいつものように夕飯の準備をしていた。
（こんなときくらい、作んなくたっていいのに。）
そうは思ったが、代わりに夕飯を作ることなんてミサトやアスカにできるはずもない。
「どこ行ってたのよー、私にもシンちゃんにも何にも言わないで出かけて。言ってくれれば車で送ったのに。」
「出かけるとき、あんたビール瓶抱きしめて寝てたわよ。」
「いやーんばれたー？」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、私のだわ。」
ミサトが立ちあがり玄関に向かう。彼女はだらしない部屋着のままで、アスカは顔をしかめてミサトを見送った。
「ほら、これ。」
持っていた紙袋を、アスカはぶっきらぼうにシンジに差し出す。
「もしかして、誕生日プレゼント？」
驚いた表情でシンジが紙袋を受け取る。
「それ以外に何があるのよ。」
シンジはごめん、と小さく言ってから、
「開けていい？」
とアスカに断った。
「どうぞ。」
封を切って中を見ると、リュックが入っていた。ベージュが基調になっていて、シンジらしく、あまり男らしいものではない。
「わぁ、カバンだ。」
シンジが完成をあげてリュックを見回す。
「あんた、中学と同じカバンで学校いってるでしょ。高校に入ったんだから新しいのにしなさいよ。」
「変えようと思ってたんだけど、最近お金がなくて。」
シンジが苦笑する。
「ほんとにありがとう、アスカ。」
「ん…じゃ、私部屋着に着替えてくるわ。あ、そうそう、メッセージカードちゃんと見ときなさいよ。」
そう言ってアスカは自室に入ってしまった。不思議に思って紙袋の奥に入っていたメッセージカードを取りだす。
メッセージ自体は、もともと印刷された状態のまま、ただ「Happy Birthday！」としか書かれていない。
（ちゃんと見るって、どういうことだろう。）
裏がえすと、アスカらしいきれいな筆記体で宛名と差出人が書かれていた。
シンジは「From.Asuka」の下に、半分くらいの大きさで書かれている文字に思わず微笑んだ。
「はーいお待たせ！シンちゃんのバースデーケーキよん。」
元気な声とともにミサトがリビングに戻ってきた。
手には大きな白い箱がある。
「わぁ、わざわざバースデーケーキの宅配を頼んでくれてたんですか？」
「そうよん。シンちゃんは大事な私の家族なんだから。って、あら？シンそれ…もしかしてアスカからのプレゼントだったり？」
ミサトがニヤッとして口元に手を当てる。
「はい、あ、でも。」
シンジが声をひそめて言った。
「これ見てください。」
「あら…2人、いつの間に随分仲良くなったのねえ。一緒に買いに行ったのかしら？」
カードのはじには、米粒大の文字で、「＆Rei」と付け足されていた。 ]]>
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		<dc:date>2013-06-06T01:44:10+09:00</dc:date>
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	<item rdf:about="https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry5.html">
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		<title>黄昏とまどろみ</title>

		<description>「ぜんっぜん終わらないわ…。」
誰もいな…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「ぜんっぜん終わらないわ…。」
誰もいない教室で嘆く。
いつもならこんな時はヒカリに頼るのだが、今日は学級委員の会議があるといってどこかに行ってしまった。
全然終わらない、と言うよりやる気の問題かもしれない。ケータイの充電は帰りのホームルームの時よりも明らかに急速に減っている。
はぁ、とため息をついて天井を仰ぐ。今が何時かなんて、見たところで焦るようにも思えない。
「あれ…えっと…惣流さん、だっけ。なにしてるの？」
教室の入り口から声が聞こえた。あまり聞きなれない声だと思ってそっちを見ると、３日前に引っ越してきた転校生だった。
「あんたは…碇だっけ。」
「うん、碇シンジだよ。」
「そうそう、碇シンジ。あんたは何してんの？」
「前の学校がここより授業が遅れてたから、補習をやってもらってたんだ。」
で、惣流さんは何してるの、と彼は首をかしげた。
この時間には部活棟やグランド以外には生徒はもうほとんど残っていない。
「あんたが転校してくる前に文化祭があったんだけど、その会計報告書を出し忘れてたのよ。だからここでやっちゃおうと思って。」
彼は聞きながら教室に入り、私の前の椅子に座った。
「惣流さんが実行委員だったの？実行委員ってクラスにつき１人でやるの？」
「いや、もう一人いるんだけど、部活の大会前だから忙しくて頼まれちゃったのよ。」
「家でやればいいのに。」
「家じゃ完全に投げだすのが目に見えてるわ。」
なるほど、と彼は笑った。うっすらとえくぼができる。
「今も結構投げだしちゃってるように見えるけどね。」
夕焼けが、彼の色白い顔をオレンジ色に染めていた。整っている顔と、つやつやと夕焼けを反射する彼に、少し見とれてしまった。
「あんた、前の学校じゃモテたんじゃないの。」
言ってから、その言葉がセクハラじみていたことに気がついた。
「そんなことないよ。普通の高校生だったよ。」
「背もでかいし。」
近寄ってきたときのことを思い出すと、180センチ近くありそうだった。
「ほめてくれてるの？ありがとう。」
「どういたしまして。」
自分の役目を忘れて机の上で転がるボールペンを、彼が見る。
「仕事、いいの？」
「めんどくさくなっちゃった。」
「手伝うよ。これを合計すればいいんでしょ？」
彼が書きかけの会計書と電卓を自分のほうに向ける。
「そう。それでここに書く。」
「わかった。僕は会計やるから、惣流さんは報告書の文章書いてなよ。」
彼の言葉に甘えてそうすることにした。正直かなり助かったが、素直に感謝の言葉が出てこないのが私の悪いところだ。
「随分手際がいいのね。」
「前の学校もついこの前文化祭だったんだけど、それで僕も実行委員やってたから。」
軽快な音を立てて彼が電卓を叩く。反対に、私は今日はじめて話した彼が気になって１文字もかけずにいた。
「あんた、まだ帰らなくていいの？」
「うん、僕１人暮らしだからね。自由だよ。」
「１人暮らし？」
「うん。惣流さんってさ、コンフォートってマンションに住んでない？」
は？と声が漏れた。こっちが探る側のつもりだったから、思ってもいない切り返しだった。
「そうだけど…何で知ってんのよ。」
「僕もそこに住んでるんだよ。昨日、帰りに惣流さんが僕の前でコンフォートに入っていくのを見たから。惣流さんは僕に気づいてなかったっぽかったけども。」
確かにこの前の週末、マンションの前には引っ越し業者のトラックが止まっていた。新しいマンションだから最近の入居者が多く、そこまで気に留めていなかった。
そこから、私も彼も自分の作業に入りこんだ。30分もしないうちに、すべてが終わった。
「あんた、こういうの向いてるんじゃない？」
「たしかにこういう細かい作業は結構好きかも。」
はい、と彼が私に会計書を渡す。
「お礼になんかおごるわよ。確か購買の自動販売機はまだ動いてるはずだから。」
「そんな、お礼なんていいよ。ちょっと手伝っただけだから。」
「そう言うのは私の気が済まないのよ。ほら、何がいい？」
うーん、と彼は困った様に笑ってから、
「じゃあ飲み物はいいから、惣流さんともうちょっと話がしたいんだけど。」
といった。
「意外と積極的なのね。」
「そういうのじゃないよ。」
彼は一瞬腰を浮かせて座り直した。部活動時間終了を告げるチャイムが鳴り、校庭に下校を促すアナウンスが流れる。
生徒はもういないと思われている校舎内には、放送は流れない。
世界から私たちだけが隔離されたような気がした。そこに不安はなかった。
「惣流さん、なんか悩みとかないの？」
「…宗教の勧誘なら、断るわよ。」
それも違うって、と彼はまた笑って首をふった。
「ちょっと聞きたいなって思っただけなんだよ。」
怪しい感じもしなかったので、私は心当たりを探し始めたが、これと言って今悩みなどない。
交友関係は（おそらく）良好だし、成績だっていままで苦労したことない。恋の悩みなんて、なおさら縁がない。
「強いて言うなら、料理かしらね。」
「料理？」
「そう。うちはママと二人暮らしなんだけど、最近ママが海外に単身赴任始めちゃって。食事全部自分で用意してるんだけど、私今まで料理なんてしなかったから、コンビニとインスタントばっかりなのよ。さすがに体に悪いかなって。」
なるほど、と彼は頷いた。特別深刻な悩みを打ち明けているわけでもないのに、彼の表情は妙に真剣だ。
「それはよくないね。」
「でしょ？ヒカリ…学級委員の子ね。ヒカリに何回か簡単にできる料理教えてもらってるんだけど。あの子も最近自分のことで忙しいから迷惑かけたくなくて。」
彼女は自分の色恋沙汰で精いっぱいだ。相手の男は、自分では硬派と言い張るが客観的にはただの鈍感なガンコだから、なかなか思うように発展しない。
「へえ。…あ、ちょっとまってて。」
そう言って彼は立ち上がり、自分の席に置いてあったカバンの中を探りだした。そして中からタッパを持ち出し、
「これ、食べる？」
と、ふたを開いて私に見せた。
「なにこれ、マフィン？」
タッパの中を覗き込んで聞く。
「そう。お昼に一緒に食べようと思ってトウジとケンスケに作ってきたんだけど、なんか、トウジがお昼休み教室にいなくて。」
ヒカリが屋上でお弁当をふるまったからだ。あいつらしく、彼にも相田にもなにも言わずに出て言ったらしい。
「あんたが作ったの？」
「そうだよ。僕もここに来てからは１人暮らしだから、結構暇なんだ。」
相づちを打ちながらありがたくマフィンを一つ手に取る。もちろん冷えてはいるけれど、ふっくらとしていて色つきもおいしそうなものだった。いただきます、と断ってから一口かじる。
「ん、おいしいわね。」
「作り方は簡単だから、惣流さんみたいに料理普段しない人でもできるよ。」
「なるほどね。」
「こういう簡単なものから始めて、作ったものを誰かに食べてもらえば、料理って上達するんだよ。」
頷きながら次の一口をかじる。
「自分で食べるんじゃだめなの？」
「だめってわけじゃないけど、誰かのために作るとなるとやっぱりやる気が違うよ。」
ふぅん、と相づちを打ち、マフィンを凝視してから最後の一口を放り込んだ。
「僕でよければ、いつでも食べるから。」
「腹壊しても文句は聞かないわよ。」
「大丈夫大丈夫。」
「同じマンションに住んでるんだから、休日に持っていけるわね。」
「そうだね。僕はあんまり外に出ないから、ほとんど家にいるよ。」
気がつけば、空のオレンジ色はほとんど消えていて、群青色が大部分を支配していた。
「うわ、結構遅くなっちゃったわね。」
「ま、帰っても誰もいないし、僕ら。」
「そうだったわね。」
出来上がった書類とペンケースをカバンにしまう。作業を終えたころより手元がずいぶんと暗くなっている。
「誰もいないけど、帰る価値はあると思うわ。」
その一言に彼は頷き、立ち上がった。


彼は帰り道、ずっと初心者に優しいレシピを私に語っていた。それはありがたいけれど、結構な品数を提案してくるものだから、歩きながら聞いただけでは到底覚えて挑戦できるようなものではなかった。
一通り聞いてから、私はふっとうかんだ５文字を口にした。
「…バカシンジ。」
「え？」
驚いた顔で彼が私を見る。
「い、いや、なんかいま、何となく言っちゃって…。」
会って３日でバカ呼ばわりはないだろうと自分を責めた。彼は不機嫌になるわけでもなく、ただ驚いたままでいた。
「そんなに驚かなくても。」
私の一言で彼ははっと我に返り、
「あはは、びっくりしちゃった…。名前でよんでも、全然いいんだけどね。」
と言った。
「そう？まぁ、せっかく友達ってやつになれたんだものね。遠慮なく。」
「僕も、アスカって呼んでいいかな。」
その一言に、なぜか私が黙ってしまった。どうして言葉が続かないんだろう、と、自分でも分からなかった。
ただ、訳も分からずその言葉にひどく動揺してしまったのだ。
「い、いいけど。」
ようやく返事をした。その時、ちょうど私が住むマンションの入り口の前にたどりついた。
「僕、奥の棟だからここが入り口じゃないんだ。だから、ここでバイバイだね。」
「そうね、じゃ、また明日。」
「アスカ。」
手を振って入口に向かう私を、シンジが呼びとめた。
「この世界は、本当は３年前にできたものだって言ったら、信じる？」
冗談を言っているような表情ではなかった。
「それはないでしょ…だったら、私たちが授業で教わってる歴史はなんなのよ。教科書は何千年も前のことから始まってるけど。」
「ちょっとちがうな…。正確に言うと、もともと別の世界があって、3年前に書き換えが起こって、今の世界になったんだ。」
不思議と、その話に引き込まれてしまう自分がいた。彼を睨みつけて強引に帰ってしまうこともできたが、そんな気にはならなかった。
「じゃあ、3年前の私は今の私と全然違ったってこと？」
「アスカだけじゃなくて、みんなそうなんだよ。たとえば、アスカは世界を守るために強大な敵と戦ってたかもしれないし、僕やトウジ、ケンスケや委員長はそのときすでにアスカと出会っていたかもしれない。」
「なるほどね。あんた以外のみんながそれを忘れてるって言うんなら、それもあり得るかもしれないわね。」
「信じてくれる？」
「うーん、２％くらい。」
少ないなぁ、と彼は苦笑した。
「普通の反応なら０％でしょ。サービスしてやったのよ、これでも。
「それはありがとう。」
「じゃあ、なんで3年前に、その書き換えが起こったの？」
そう聞くと、彼は頭をかいて照れ笑いをした。
「好きな女の子に、幸せになってほしかったんだ。」
「意外と情熱的なのね。」
「書き換えの前は僕のせいで悩ませちゃったからね。」
「その子にはあったの？」
「うん。」
彼は大きくうなずいた。満足の表情を浮かべている。
「その顔を見ると、その子は幸せになれたのね。」
「うん、そうみたい。」
「こんなとこで油売ってていいの？その子と一緒にいなさいよ。」
別の女と放課後遅くまでいたなんて、その彼女にとっては大問題だ。
「幸せそうな顔を見られたから、もういいんだ。僕は必要ないみたい。」
「そんな辛気臭いこと言ってないで会いに行きなさいよ。」
「そうだね、そうしよっかな…じゃ、今度こそこれで。バイバイアスカ。」
「ん、また明日。」
彼が私のもとから去る。私も帰ろう、と歩き出そうとした時、
「アスカ。」
後ろから肩を叩かれた。



振り返った途端、目が覚めた。



「アスカ、アスカ。」
声の主はヒカリだった。小刻みに身体を揺らされている。
私は机に突っ伏してペンを持ったまま寝てしまっていた。
教室は、オレンジ色に染まっていた。
「いつから寝てたの？」
「ん…と…。」
目をこすりながら起き上がる。
「あ、会計報告書、できたんだ？よかったね、今日中に終わらせられて。」
ヒカリが机の上の会計報告書に気がついて言う。
その時、眠りから完全にさめた。
さっきまで、シンジと帰っていたのに、どうして教室にいるんだろう。
「あれ？あいつは？」
「あいつ？」
ヒカリが首をかしげる。
「あの、転校生…碇シンジってやつ。」
「いかりしんじ？」
ヒカリはさらに首をかしげた。
「転校生なんて、いないと思うけど…。」
「え？」
机の上を見ると、ペンは1本しかなかったし、会計報告書に書かれている字も私の字だった。
「そう…。」
「もう、寝ぼけてないで帰ろう？校舎閉まっちゃう。」
「そうね…。」
納得のいかないまま、荷物を片付けて立ち上がった私を見て、ヒカリが笑った。
「ちょっとアスカ、何食べてたのよ。」
彼女が私の口の右端を指さした。
そこを触ると、お菓子の食べカスがついていた。
「マフィン…。」
私が答える。
「マフィン？購買で買ったの？」
「ううん、もらったのよ。」
「へえー…また男子でしょ？アスカにプレゼントする男子、多いもんね。」
まあね、と、私は、食べカスを見て笑った。
「今度はどんな男子だったの？」
「気の弱そうな奴だったわ。」
「気弱？気弱でも、その人は頑張ってアスカに会いに来たのね。」
ううん、と私は首を横に振った。
「3年前まで一緒にいたんだもの。大した距離じゃないと思うわ。ヒカリも知ってる人よ。」
空はまた、オレンジから群青へと色を変えていった。 ]]>
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	<item rdf:about="https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry4.html">
		<link>https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry4.html</link>
		
				
		<title>Peaceful Days【後編】</title>

		<description>「ここがシンジくんのお宅か。」
「うん…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「ここがシンジくんのお宅か。」
「うん、上がってってよ。あ、でもアスカの熱がうつらないようにね。」
「その心配は、ないわ。」
そういうレイを不思議に思いながらも、僕は玄関のドアを開けた。
「ハッピーバースデー！！」
開けたとたん、その言葉と破裂音、飛んでくる紙テープに歓迎された。
「うわぁっ！」
玄関には、トウジ、ケンスケ、委員長、それに、アスカが立っていた。４人とも空っぽのクラッカーを持っている。
「どうやシンジ、驚いたやろ？」
トウジがにやにやしながら僕に聞く。
「うん…って、アスカ熱なかったの！？」
アスカが誇らしげに腰に手を当てて答えた。
「その通り。あんたがうかつに外に出ると買出しに行ったヒカリたちに遭遇しそうだったから引きとめてたのよ。どう？素晴らしい演技だったでしょ？」
ずっとパジャマだったのに、いつの間にかちゃんとした服に着替えている。
あの上目づかいも演技だったのかと思うと急に悲しくなった。
「どおりで熱があるわりに元気だと思った…。」
それからトウジとケンスケに背中を押されながら、リビングに入った。
リビングに入ると、「シンジ誕生日おめでとう」という横断幕と、たくさんの装飾で部屋がいっぱいになっていた。
テーブルの上にはおいしそうな食事が並んでいる。
「料理はお昼からずっとアスカの家で準備してたの。碇くん料理上手だから、ちょっと不安だけど。」
僕の後ろで委員長が言った。
「あのから揚げ、ワイがあげたんやで、絶対にうまいから覚悟しとけや。」
「僕は料理全然だから、買い物に行っただけだけどね。」
トウジとケンスケも言葉を足した。
「カヲルくんとレイも、このこと知ってたの？」
振り返るとカヲルくんが申し訳なさそうな顔をした。
「人をだますのはあまり好きじゃないんだけど、今回は喜ばせるためのものだからね。進んで参加させてもらったよ。」
「私たちは時間稼ぎ。待ち伏せしてた。」
「ジュース買うの忘れてたから、メールで頼んでついでに買ってきてもらったんだ。」
あの時カヲルくんが見たメールはケンスケからのものだったんだ。
だからあんなに大量のジュースを買い込んだのだ。
「そっか…そう言えば、今日僕、誕生日だったんだね。忘れてた。」
「バッカね、自分の誕生日くらい覚えてなさいよ。」
「昨日は覚えてたんだよ。でも今日は朝からアスカが来てわたわたしてたから…。」
「なによ、私のせいってワケ？」
睨まれて、僕はまた何も言えなくなってしまった。
「みんなありがとう。ホント、嬉しいよ。」
学校で誕生日を祝ってもらえることは何度もあったけど、今年の誕生日は休日だから、何も起こらないと思っていた。
「毎年私が祝ってあげてるでしょうに。」
アスカは毎年僕の家に来て、夜ごはんを一緒に食べてくれていた。
「うん、でも、今年はこんなに祝ってもらえるなんて、幸せだなぁ。」
「企画は私だからね。感謝しなさいよ。」
「まーまーご夫妻。細かいことは後にして、乾杯しようや。」
委員長が全員分のコップにお茶を注いで、レイがみんなに配っている。
「そうね、じゃあ、せーの！」
「かんぱーい！」
お茶を一口飲んでから、僕は皿の上のから揚げを箸でとった。
「トウジ、から揚げおいしいよ。」
「せやろ？他のもうまいから、どんどん食ってくれや、主役さん。」
「他のもうまいって、鈴原まさかつまみ食いしたの！？」
委員長が厳しい目つきでトウジを見た。
「ば、ばれてもーた！」
「もうっ。」
「せっかく鈴原に料理褒められたのに、ヒカリも素直じゃないわね。」
僕の隣でアスカがにまにましがら言った。
「どういうこと？」
アスカは呆れた顔をしてため息をついた。
「はー…ほんっとニブチンね。」
「素直じゃないのは君も同じだと思うんだけどね。」
カヲルくんの言葉にアスカはテーブルを強く叩いて反論した。
「な、何言ってんのよアンタ！」
「本当のことを言ったまでさ。」
カヲルくんはすがすがしい顔でお茶を飲んでいる。
両隣りで争いが起こると苦笑するしかない。
「そういえば式波さん、プレゼントは渡さなくていいのかい？」
「あ、そうだったわ。はい、これ。」
アスカはそばに置いてあったはがきくらいの大きさの箱を僕に渡した。
「６人でワリカンして買ったのよ。」
「ありがとう、開けてもいい？」
「どーぞ。たいしたもんじゃないわよ。」
「アスカー、ごめんね、アスカの家に携帯電話置いてきちゃった。一緒に取りに行ってもらってもいい？」
箱の包装を取っている時に、委員長が玄関からアスカを呼んだ。
「あ、今行くー！」
アスカは立ち上がって、僕のそばを離れた。
「シンジくん、プレゼントの箱は開けたかい？」
カヲルくんにそう言われて中を見る。箱には、S-DATが入っていた。
S-DAT？僕はなんで見ただけで機種が分かる？ただのテープレコーダーじゃないか。
それに今はMP3が主流で、テープレコーダーなんてもう誰も使っていない。なんでこんなに古いものをプレゼントしてきたんだ？
「これ…は…。」


『乗るなら早くしろ、出なければ帰れ！』
父さん？
乗るって、何に乗るんだ？
『悪いな転校生。ワシはお前を殴らなアカン。』
トウジ？
僕は転校なんてしてないよ？
『悪いね、こいつの妹、こないだの戦闘でケガしちゃってさ。』
ケンスケ？
戦闘？なんだよそれ。トウジの妹は昨日トウジの家で元気そうにしてたじゃないか。
『あなたは死なないわ、私が守るもの。』
レイ？
何から僕を守るんだ？
『エヴァで戦えなかったことを恥とも思わないなんて、所詮、七光りね。』
アスカ？
エヴァ？戦う？僕が戦う？

『行きなさいシンジくん！誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために！』
担任の、葛城先生…ミサトさん…


『綾波、父さんのこと…ありがとう。』
『ごめんなさい。何もできなかった。』
『良いんだもう…これでいいんだ。』


「僕、は…。」
エヴァのパイロットだった？
エヴァってなんだ？ネルフってなんだ？使徒って何だ？
僕は普通の中学生だ。戦うなんて知らない。
でも、じゃあ、この記憶はなんだ？
ひどくめまいがした。僕は頭を手で押さえ、うつむいた。倒れこみたい衝動に必死に耐えた。
向こうで楽しそうに話すトウジとケンスケの声が、どんどん遠ざかっている気がする。
「シンジくん。」
カヲルくんが僕の肩に手を置いた。
その瞬間、トウジが、ケンスケが、レイが、料理が、ジュースが、部屋が、なにもかもが、消えた。
隣にカヲルくんがいるだけだった。他には暗闇しかなかった。
「思いだしたんだね。君は、本当の君を。」
「いつから…この世界に。」
「１４年間、この世界で生まれてからずっとだよ。僕が本１４年間眠ったままの君の望む世界を見せていた。あちらでは、君と僕はまだ出会っていないけどね。」
確かに、今よみがえって記憶の中にカヲルくんはいなかった。
「今日、君に１度だけ目を覚ますチャンスがやってくる。君があの世界から離れたときと同じ日、同じ時間だ。これを逃せば君はずっとここにいられるし、目を覚ませば、君はこの世界の記憶を失い、君にとって最悪の世界で君は目を覚ます。」
最悪の世界って…
「僕は、綾波を助けたじゃないか。」
「君は綾波レイを助けられなかった。あちらではサードインパクトが起こっていて、世界はさらに混沌としている。どうする？君には選択する権利がある。このまま偽りの幸せに満ちた世界を生きていくのか、本当の絶望に満ちた世界を生きるのか。」
「そんな…そんなこといわれても。」
「悩むのも無理はない。でも、目を覚ますのはこの１度限りなんだよ、シンジくん。全てを思い出した今、どちらの世界を生きるか選んでほしい。」
この世界でも、僕は何度も悩んだ。けれどもそれは平凡な悩みで、あっちの世界だったらなんでもない、小さな困難ばかりだった。
それでも、目を覚ませばもっとひどいことが待っているのか？
ここにいれば、ずっと幸せでいられる。
自分がひどく傷つけてしまったアスカも、ここでなら元気でいられる。
「でも、これは偽りの世界…。」
偽りのアスカを幸せにしても、それは所詮偽り。僕だけが見ている夢だ。
「偽りでも、君はここで幸せを掴めるんだよ。」
カヲルくんの言葉に、僕は首を横に振った。
「だめだ。これは僕だけの偽りじゃない。僕はこの世界ではみんなのことも偽ってる。アスカがこうして元気でいるのも偽りだし、綾波もアスカも僕も、エヴァに乗らずに普通に生きているのも偽りなんだ。」
僕はカヲルくんの顔をまっすぐ見つめた。
「僕は本物の僕に戻って、現実と向き合う。本物のみんなに幸せになってほしい。」
そう言う僕を見て、カヲルくんは納得した顔をして笑った。
「分かった。大丈夫、あの世界は確かに絶望に満ちているけれど、どんなときにも希望はある。あっちの世界でも僕は君と出会って、希望を見つける手助けをしてみせるよ。彼女とも、君が望むような形ではないけれど、また会える。」
「ありがとうカヲルくん…最後に一つだけ、お願いがあるんだけど、いいかな。」
「なんだい？」
「３分だけでいいから、この世界に居させて。アスカに言いたいことがあるんだ。」

僕は自分の家を出て、となりの玄関のドアを開けた。
「あれ、碇くんどうしたの？」
ちょうど委員長とアスカが僕の家に戻ろうとしている所だった。
「ごめん、委員長。ちょっとアスカに用があるんだ。先に戻ってて？」
「え…ええ、わかった。」
委員長は戸惑いながらもうなずき、僕の家へもどっていった。
「な、何よ、襲う気？」
「そ、そんなんじゃないよ。」
そう言ってから、ふう、と深呼吸をした。
この気持ちは、もっと取っておくつもりだった。何年か経って、やっと勇気が出たら言うつもりだったし、勇気がなければずっと黙っているつもりだった。
「アスカ。」
「なによ。」
「１回だけでいいから…その、抱きしめてもいい？」
「は！？」
アスカの顔がみるみる赤くなっていく。きっと僕も、同じくらい赤いんだと思う。
「いい？」
「…いいわよ。」
ためらってる余裕なんてなかった。いつもなら絶対に出ない勇気が、今は簡単に出た。
少しでも長く抱きしめていたかったから、強引に僕はアスカを引っ張って抱き寄せた。
「背、伸びたわね。」
「成長期だからね。」
去年は明らかにアスカのほうが大きかった。ようやく追いついていたことに、今さら気付いた。
僕の方が大きくなっているところ、アスカに見せたかったな、なんて、些細なことを今考える。
僕が腕の力を強めると、アスカも同じだけの力で応えてきた。
「いきなり何なのよ。」
「ほんとはずっとこうしたかったんだけど、勇気が出なかったんだ。」
「…そう。」
どれくらいそうしていたのかは分からない。僕らは何も言わず、ただお互いを強く抱きしめていた。
『シンジくん、そろそろ行こう。』
カヲルくんの声が頭に響いた。そう、僕は帰らなければならない。本当の困難に、向き合わなければならない。
僕はゆっくりとアスカから離れた。
「アスカ、ずっと僕と一緒にいてくれてありがとう。」
そう言うと、アスカは首をかしげた。
「なによ、これからもでしょ。」
「…そうだね。」
笑ってそういうしかなかった。意識が薄れてきていて余裕がなかったからだ。
まるで今から眠るかのように、視界がぼやけ、頭がなかなか回らなくなってきた。
「僕…僕さ、ずっと、アスカのこと、好きだったよ。」
言い終えたころには、アスカの顔すらうまく見えていなかった。足で立っている感覚すらなくなっている。
けれども、
「私も…ずっとシンジが好きだった。ずっと、ずっと前から。」
という声だけがはっきりと聞こえた。僕にはもう何も見えていなかった。
いつでもアスカはそうだった。僕が迷えば、そのまっすぐな声で、僕を導いてくれていた。
どんな時も、アスカは僕を照らしてくれていた。
（ありがとう。）
ちゃんと言えたか、言えずに終わってしまったか、僕には分からない。



そうして僕は、真っ赤な世界で本当に目を覚ます。 ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-05-14T00:24:44+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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	<item rdf:about="https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry3.html">
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		<title>Peaceful Days【前編】</title>

		<description>「自分の家で休めばいいのに。」
「だれ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「自分の家で休めばいいのに。」
「だれがお昼作ってくれるのよ。病人だってお腹はすくの。」
アスカが僕のベッドの中で偉そうに言い張る。
「もう…せっかくの日曜日が。」
「…じゃあ、熱出して１人で何もせずじっとしてろっていうの？」
「…しょうがないなぁ…。」
僕は濡れタオルをアスカの額に置いた。
同じマンション、となりの部屋に住む幼なじみのアスカは、熱を出して突然僕の家にやってきた。
僕の家もアスカの家も、研究所に入り浸っているような親たちだから、看病はしてもらえないし、そもそもアスカのお母さんはアスカが熱を出していることすら知らない。
「こんなしょうもないことで連絡して、ママの仕事邪魔したくないしね。母子家庭なんだからそのへんの事情は分かってるわ。」
「僕の事情も分かってよ…。」
顔色もそこまで悪くないし、体温計は見ていないけどそこまで熱も高くなさそうだ。
「お昼作るよ。なにがいい？おかゆ作りたいけど、今お米切れてて…。ちょっと買ってくるね。」
「は？どこに買いに行くの？」
「どこって、いつものスーパーだけど。」
起き上がり、額のタオルを落としてアスカが怒鳴った。
「ぜったい嫌！家のものにしてよ、あんただって面倒でしょ。」
「う、うん…。」
何をそんなに嫌がるんだろう…
アスカがおかゆが嫌いだなんて言っているところは見たことがない。
冷蔵庫を見ると、昨日の夜に食べたうどんが２人分残っていた。
父さんと母さんが帰って来た時のために取っておいたものだ。
「じゃあ、うどんにしよっか。」
「それで我慢してやるわ。」

「ふん、味はまぁまぁね。」
きついことを言いながらも、アスカはうどんを完食した。
「食欲あるんなら、すぐ元気になれそうだね。」
アスカから空になったどんぶりを受け取り、台所のシンクに置いた。
「寝たら？」
「そういう気分じゃないわねー。」
アスカはだるそうに布団に戻った。
「寝た方がいいよ。」
「寝たくなったら寝るわよ。」
ベッドの向こうにある窓を見ると、桜並木が広がっていて、風にあおられて舞う花吹雪が見える。
アスカも起き上がり、それを見て、
「今年もまだ咲いたばっかなのに、散るのね。」
と、ぼそりと言った。
「桜って、昔は４月に咲いてたらしいよ。」
「ふーん。いつ咲いたって同じ花でしょ？」
「まぁ、そうだけど。」
「でも春に咲いた方がいいわね。梅雨の雨で地面が濡れた花びらだらけになるの、いやだもの。」
「あれ、靴にすっごいくっつくもんね。散ってるとこはきれいなんだけど。」
「雨で結構散るから、４月なら晴れてて花も結構持つかもね。」
幸い、今日は晴れているから桜もきれいに散っている。
そのピンクの雪が、突然なぜか新鮮なものに思えてきた。
「なんか、桜を見たの、これが初めてな気がする。」
「なーに言ってんのよ。あんたまで熱出してるわけ？桜なんて毎年咲いてるでしょうに。」
そう言うアスカの横顔を見ると、ドイツの血も入っていることもあって本当に綺麗な顔をしているなと思った。
小さいときからずっと見ている横顔で、小さいときからずっときれいだと思っていた。




<span style="color:#CC0099;">Peaceful</span> <span style="color:#FF66CC;">Days</span>





そういえば、とアスカが口を開いた。
「あんた、ラブレターもらったんだって？」
「あー…うん、C組の中村さんって人から。」
「鈴原から聞いたわ。なんで私には言わなかったのよ。」
責めるようにアスカが言う。
「べつに、付き合うとか、そういうつもりでもなかったから…。」
言わなかったことはそんなに悪いことでもないはずなのに、すごく悪いことをしたような気になって、僕は言い訳のようにアスカに言ってしまった。
「断ったの？」
「うん…よく知らない人だし。」
ふーん、というとアスカは明らかに興味を失った顔をした。
「ま、彼女ができるガラでもないしね。中村って子、あんたのなにが良かったんだか。」
「そんな言い方しなくても。」
「じゃああんたのどこに魅力があるっていうのよ、こんなさえない顔。」
アスカが僕の頬を引っ張る。
「痛い痛い。」
「今度ラブレターとか告白とかあったら私にちゃんと報告しなさいよ。」
「なんでだよ。それに、アスカのほうがよっぽどしょっちゅうげた箱とか机とかに手紙が入ってるじゃないか。」
「あたしはいーのよ、返事なんてしないし。とにかく、あんたは私の言う通りにしなさいよ！」
さっきから、ホントに熱があるとは思えない。
それとも、熱があるからこそこんな支離滅裂なことをいうのか。
「はいはい。アスカ、寝なよ。」
「だから寝たくなったら寝るっつってんでしょうに。」
「僕、夕飯の買い物行きたいんだけど。」
僕が立ちあがろうとすると、アスカは思いっきり僕の服の裾をひっぱった。
その勢いで僕は、床に思いっきり尻もちをついた。
「いったぁ！」
「買い物なんて後にしなさいよ。」
「ええー…アスカ今日ずっといる気でしょ？いつ行ったって変わんないよ。」
「私が寝てるときにしなさい。」
「なんでだよ。」
「いいから…。」
そう言って上目づかいをするアスカに、僕は少しどきっとしてしまうのが悔しい。
「…わかったよ。その代わり、横で宿題してていい？」
「許可するわ。」
数学のテキストをカバンからだして、僕は宿題を始めた。単元は二次方程式だ。
「そんな簡単な問題に時間かけてどうするの？」
バカにしたようにアスカが鼻で笑う。
アスカは小さいときから僕よりずっと勉強ができて、中学でも定期テストではほとんど学年一位だ。
「そりゃアスカくらいできたら苦労しないよ。」
僕は中の上。僕らしいと言えば僕らしいし、悪く言えば中途半端だ。
「ま、私は天才だからねー。」
「同じ研究者の子供なのになぁ。」
「そんなこと言ったらこの街の子供ほとんどがそうでしょ。そもそもこの街の子供の学力レベル、全国で一位だしね。」
アスカが退屈そうに腕を頭の後ろで組んだ。
「はぁ、普通の中学が良かった…。」
「そんなしょうもないこと言ってないで、勉強して頭良くなればいい話でしょ。」
「そういえばアスカ、高校はどうするの？」
中学二年の六月。早い人は行きたい高校を大体絞っている。
「全然考えてないわ。私はどこでもそれなりにやれるもの。あんたは？」
「できれば、父さん母さんと同じところがいいんだけど、この成績じゃね。」
隣町にある、県の中でもかなり上位の高校だ。
「小田原にあるやつね。うちのママもそこだったし、私もそこ狙おうかな。」
「アスカは第三新東京高校じゃないの？」
僕が狙うところよりも上、全国でもトップクラスの高校だ。
「頭でっかちの変人に囲まれても楽しくないわ。」
確かに超難関だけど、アスカなら十分狙えるところなのに。
「面倒見てやるわよ、高校も。」
「…おせっかいだなぁ。」
聞こえない大きさで言ったつもりだったけれど、アスカには聞こえていたようで、
「なんか言った？ありがとうじゃないの？」
と、睨まれてしまった。
「はいはい、ありがとう。」
でも、アスカとまだまだ一緒にいられると思うと、少し嬉しい気分になった。理由は分からないけど、できるかぎりアスカと一緒にいたいと思っていた。
「じゃあ、僕も勉強頑張るね。」
「あんたの頭じゃ受かるか怪しいわね。私が教えてやってもいいわよ。」
アスカを見ようとしたけど、僕に背中を向けてしまっていたので、どんな顔をしているか分からなかった。

宿題を進めているうちに、アスカの口数が減っていることに気がついた。
ふと彼女の顔をのぞくと、完全に目を閉じて寝息を立てている。
アスカに言われたとおり、僕は彼女が寝てから買い物に出かけた。
必要なものを買ってスーパーを出ると、目の前でよく知った顔の２人が信号待ちしていることに気がついた。
「レイ、カヲルくん。」
クラスメイトのレイと、その双子の兄のカヲルくんだった。
「やぁシンジくん、買い物かい？」
僕の手に買い物袋があるのを見て、カヲルくんが聞いた。
笑顔であいさつする彼とは対照的に、レイは表情を変えずにこっちを見ている。
「うん、そこのスーパーにね。２人はどこに行くの？」
「あてのない散歩さ。僕たちはこの街に引っ越してきたばかりだからね。街を探索して道に慣れようと思って。シンジくんも、用事がなければ一緒にどうだい？案内してほしいな。」
「そうしたいところなんだけど、今日は家にアスカがいて…、熱があるから、あんまり放っておくのは心配なんだ。」
「おや、式波さんが熱を出しているのかい？それは心配だな。」
カヲルくんの言葉に、レイもうなずいた。
転校してきたばかりの女の子に「レイ」なんて呼ぶのはなれなれしくて気が引けたけど、「僕も同じ名字だから、名字で呼ばれるとややこしいんだ。だから気にせず名前で呼んでほしいな。」とカヲルくんに頼まれた。
この双子は、どこか不思議な雰囲気を持っていて、最初はみんな近寄りがたいように感じていたけれど、社交的な兄の態度で、２人はすぐに学校になじんだ。
「私たちも、碇くんの家に行ってもいい？」
綾波が聞いた。
「もちろん。看病に来てくれれば、アスカもきっと喜ぶよ。」
僕が答えたそのとき、ポケットの中にあるカヲルくんのケータイから着信音が鳴った。
「おっと失礼。メールだ。」
カヲルくんはメールを一読してから、
「シンジくん、コンビニはこのあたりにあるかな？ちょっと飲み物を買いたいんだけど。」
と僕に聞いた。
「コンビニなら、あっちの角にあるよ。寄っていこっか。」


「ずいぶん買うんだね。」
「僕もレイも結構飲み物は飲むんだ。」
カヲルくんとレイで、大きなペットボトルを２本ずつ持っている。
「碇くん、式波さんとは、いつから仲がいいの。」
空はオレンジ色に染まりつつあった。思ってたよりもアスカを長く待たせてしまったので、早く帰りたい気もしていたけれど、出会ったばかりのこの２人ともっとゆっくり話していたい気持ちもあった。
「さぁ、僕はもう最初に会った時のことなんて覚えてないし、生まれたときから一緒にいるんだとおもうよ。」
父さん母さん、キョウコさんも学生時代からの仲で、３人は父さんを中心として研究所を創設したとも聞いている。
「なるほど、強い絆で結ばれているんだね、素敵だ。」
「そうかなぁ…アスカは僕のことなんて召使かなんかだとしか思ってないよ。」
「そんなことはないさ。彼女からは不器用な優しさが見え隠れしているよ。君は気付かないのかい。」
気付いていなくはなかった。
アスカが僕にわがままを言うことは多かったけど、小さいときに僕が転んで泣いていれば「男のくせに泣くんじゃないわよ！」とそばにいてくれたし、毎朝僕を起こしにも来てくれる。制服の襟が曲がっていれば「だらしがないのね」と直してくれるし、教科書を忘れれば「私は予習しててもう分かってるから」と自分のものを貸してくれる。
いつも文句を言われる分、僕はアスカからたくさんの優しさをもらっている。
「ううん、分かってるよ。１４年も一緒にいるんだし。」
「それならよかった。すまないね、新参者が２人の関係に首を突っ込んで。」
「全然気にしてないよ。それに、僕ももっとカヲルくんやレイと仲良くしたいしね。僕のこともいっぱい教えるから、２人のこともこれからいっぱい教えてほしいな。」
「そう思ってもらえて光栄だよ、ね、レイ。」
カヲルくんがレイを見ると、彼女は静かにうなずいた。





（後編へ） ]]>
		</content:encoded>
		<dc:subject>-</dc:subject>
		
		<dc:date>2013-05-14T00:18:11+09:00</dc:date>
		<dc:creator></dc:creator>
		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
	</item>
	<item rdf:about="https://afterdream.web.wox.cc/novel/entry2.html">
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		<title>意地っ張りの寄り道</title>

		<description>「ちょっとアスカ、そろそろ帰った方がい…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「ちょっとアスカ、そろそろ帰った方がいいと思うよ？」
ヒカリが金色の頭に話しかける。
頭はテレビを向いたまま、振り向きもしない。指はちょこまかとコントローラを操作し、画面の中では熾烈な殴り合い蹴り合いが繰り広げられている。
「どんどん帰りづらくなるだけだと思うんだけど…。」
はぁ、とヒカリがため息をつく。
ようやくアスカが動きを止めた。命令を受けなくなった彼女のプレイヤーはCPUに悉く倒されてしまった。
「分かってるわよぉ…。」
口をとがらせ、小さい子供がいじけたかのような顔で言う。
「明日帰りなよ。ね？帰りづらいなら途中まで送るから。」



意地っ張りの寄り道



結局意地を張り、アスカは心配するヒカリの見送りを断って無理やり置いて家を後にしてしまった。
このまままっすぐ帰ったところで、彼女の同居人は彼女を責めたりしない。それでも、顔を合わせるのはどうしても気が引けてしまった。
土地勘がない彼女にとって時間を稼げるところはネルフ本部しかなかった。
「あらアスカ、ここに来るの久しぶりなんじゃない？」
当てもなく廊下をさまよっていると後ろから呼びとめられた。
振り返ると、作業着姿の赤木リツコと綾波レイが立っていた。
「エヴァでも見に来たの？やめといた方がいいわよ。エヴァの解体、結構グロテスクな光景だから。特に弐号機は目が多いし。」
「そうじゃないわ、ちょっと暇だから寄っただけ。」
「そう…まぁ、前ほどの緊張感もないし居心地もマシなんじゃないかしら。ゆっくりしていきなさい。じゃ、私はまだ作業が残っているから、レイ、先に帰ってて。」
「わかりました、博士。」
リツコは軽く手を振り、２人のもとを離れた。
白衣で研究に没頭していた彼女も、今では作業着でエヴァの解体や武器の処分に専念している。
「忙しそうねー、大人は。」
「そうね。」
そこから何を話したらいいか分からず、向こうが話題を振ってくれるわけもなく、沈黙が続いてしまった。
しびれを切らしたアスカが、苦し紛れに提案をした。
「休憩室でもいく？のどかわいたし。」
レイは黙って頷き、歩き出したアスカについていった。

「あんたの好きな飲み物なんて知らないから一応コーヒーにしたけど、飲めない？」
「いえ。コーヒーは、家で博士が毎朝淹れてくれる。」
缶コーヒーを受け取ったレイの隣にアスカが座る。
エヴァに乗っていたころは、こうして同じベンチに並んで座る日が来るなんて想像していなかった。
「へえ。料理はどっちが作ってるの？」
「博士。最近は、私も教わりたいから手伝ってる。」
生活感のない２人が同居し、しかも料理を一緒に作っている光景は、アスカには全く頭に浮かばなかった。
レイが、いつもは埋まっている私の反対隣を見て言った。
「今日は碇くんと一緒じゃないの？」
ここでその名前が出るか、とアスカは完全に動揺してしまった。
「四六時中一緒にいるわけじゃないわよ。」
「そう。私にはそう見えたんだけど。」
返事に困ることを、悪気なく平気な顔で彼女は言う。
これでも、初めて会った時よりはよっぽど愛想は良くなったし、口数も増えた。
「今日はここになにしに来たの？」
さらに残酷なことを聞く。
「ヒカリんちに泊まってから帰ろうとしたんだけど家の鍵忘れてて、入れなかったのよ。だから暇でここに来たの。」
アスカの言葉にレイが首をかしげる。
「電話して、碇くんか葛城三佐に開けてもらえばいいと思うわ。」
「あー…うーんと、そう、ケータイ、うっかり家に置きっぱなしにしちゃったのよ。」
「私が碇くんに電話するわ。まって。」
「あーいい！いいわ！」
作業着のポケットから携帯を出すレイをアスカは手で制した。
「どうして？今日は休みだけど、碇くん、そんなに遠出する人じゃないから、家の近くにいると思う。」
レイの純粋な善意は、アスカにとっては意地悪な行動である。
「ちょっと帰りづらいのよ…喧嘩して。」
「喧嘩？碇くんと？」
「そうよ。」
観念した表情でアスカは足を投げ出し、天井を仰いだ。
「ま、今に始まったことじゃないけど。」
「じゃあ、帰れば？」
さらにレイがアスカを追いこんだ。
「今更帰りづらいのよ。何日もヒカリの家にいたから、今更…。」
つい、ヒカリに帰ることを勧められていたときと同じ表情になってしまった。
「そう思って、洞木さんの家を出たんじゃないの。」
「うっ…。」
「早く帰った方がいいからって思って洞木さんの家を出たのに、ネルフ本部に来て帰らないの？」
かつてのアスカのように怒鳴り散らして休憩室を飛び出したりはしなかった。
「…あんたに人間関係のアドバイスされるとは思ってなかったわ。」
アスカは静かに立ち上がり、飲み終わった空き缶をゴミ箱に向かって投げた。缶はきれいな弧を描き、吸い込まれるようにゴミ箱の中に入っていった。
ふう、と息をついて、レイを振り返る。レイは不思議そうにアスカを見上げている。
「そういえば見たいドラマの再放送があるのよねー。しょうがないから帰ろうかしらねー。」
アスカはわざとらしく大きな声で伸びをした。
レイは、少しだけ笑って、
「急がないと、ドラマが始まるのに間に合わないかもしれない。」
と言った。


アスカは自分のポケットからカードキーを出し、玄関のドアを開けた。
「あれ、ミサトさん帰ってきたんですか？夜に帰るって言ってませんでしたっけ？」
奥のリビングから声がやってくる。しかも、その声は足音とともに近づいてきていて、アスカは何も言えずにただうろたえていた。
「早かったんですね。もしかして、せっかくの旅行なのに加持さんとケンカしたんですか？…って…。」
玄関にシンジが顔をのぞかせた。アスカを見るなり、彼はやわらかい笑みを浮かべた。
「アスカ…おかえり。」
「…そろそろあんたが私を恋しがると思ったから、帰ってきてやったのよ。」
「うん、寂しかった。」
あまりにストレートな彼の言葉に、彼女は顔を真っ赤にした。それでも素直な言葉は出てこなかった。
「…そ、そう、感謝しなさいよね。」
「うん。今日は肉じゃがのつもりだったけど、アスカがせっかく帰ってきたからハンバーグにしよっか。」
挽き肉はあったかな、と冷蔵庫を確認しに戻ろうとするシンジのルームウエアの袖を、アスカがつかんだ。
「シンジ、その…ごめんなさい。」
「ううん、僕も悪いこと言っちゃったから。」
明らかにアスカが一方的に怒りをぶつけて家を飛び出しただけだったけれど、彼はそれでも優しい言葉を彼女にかけた。
（あいつに感謝しないとね。）
分かりあうなんて絶対に不可能だと思っていた少女の顔が、アスカの頭にうかんだ。
「クッキーあるよ。一緒に食べない？紅茶もいれよっか。」
また、優しい時間が流れ始めた。 ]]>
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